二人の歩幅が揃うまで
「綾乃さんがおめでとうって言ってくれることが、一番のプレゼントです。…これっぽっちも、思ってなかったことですから。」
「オーナーさん、やっぱり全部内緒にしていた感じですか?」
「はい。だから電話が一番びっくりしましたよ。」
はは、と頭を軽くかきながら、健人は言葉を続けた。
「誕生日、そんなに意識してなかったというのもありますけど。」
「あまり、祝わない感じですか?」
「…そうですね、昔は祝ってましたけど。」
いつもは柔らかいその表情が陰ったのを感じる。ただ、そこに踏み込んでいいかはわからずに、パスタを口に運んだ。
「昔を思い出しました。綾乃さんのおかげです。ありがとうございます。」
陰った表情が元に戻る。やはり踏み込むべき話じゃなかった。少なくとも、今ではきっとない。
「今度お店に来るときは、ちゃんとプレゼントもケーキも持ってきます。あ、ケーキの味のリクエストありますか?何ケーキが好きです?」
実は結構悩んでいたことだった。何を好きなのか、どんな味を好むのか、綾乃は何も知らない。今日という日に間に合っていないのだから、白状して聞いて、好きなものを渡すべきだろう。
「ケーキ、好きなんですけどあんまり頻繁に食べないから、どんなのでも嬉しいです。」
綾乃はついジト目で健人を見た。
「え?」
「…逆に難しいじゃないですか、それじゃ。」
「あっ!ごめんなさい!困らせちゃいましたね。えっと、それじゃショートケーキがいいです。」
「オーナーさんは何が好きですか?」
「えっと、…あ、モンブランですね。」
「わかりました。ショートケーキとモンブラン。」
「あの、綾乃さん。」
「はい?」
少し言いにくそうに目線をずらして、でも意を決したように綾乃に目を向けた。
「一緒に食べるのは、だめですか?」
「オーナーさん、やっぱり全部内緒にしていた感じですか?」
「はい。だから電話が一番びっくりしましたよ。」
はは、と頭を軽くかきながら、健人は言葉を続けた。
「誕生日、そんなに意識してなかったというのもありますけど。」
「あまり、祝わない感じですか?」
「…そうですね、昔は祝ってましたけど。」
いつもは柔らかいその表情が陰ったのを感じる。ただ、そこに踏み込んでいいかはわからずに、パスタを口に運んだ。
「昔を思い出しました。綾乃さんのおかげです。ありがとうございます。」
陰った表情が元に戻る。やはり踏み込むべき話じゃなかった。少なくとも、今ではきっとない。
「今度お店に来るときは、ちゃんとプレゼントもケーキも持ってきます。あ、ケーキの味のリクエストありますか?何ケーキが好きです?」
実は結構悩んでいたことだった。何を好きなのか、どんな味を好むのか、綾乃は何も知らない。今日という日に間に合っていないのだから、白状して聞いて、好きなものを渡すべきだろう。
「ケーキ、好きなんですけどあんまり頻繁に食べないから、どんなのでも嬉しいです。」
綾乃はついジト目で健人を見た。
「え?」
「…逆に難しいじゃないですか、それじゃ。」
「あっ!ごめんなさい!困らせちゃいましたね。えっと、それじゃショートケーキがいいです。」
「オーナーさんは何が好きですか?」
「えっと、…あ、モンブランですね。」
「わかりました。ショートケーキとモンブラン。」
「あの、綾乃さん。」
「はい?」
少し言いにくそうに目線をずらして、でも意を決したように綾乃に目を向けた。
「一緒に食べるのは、だめですか?」