二人の歩幅が揃うまで
一通り食事を終えると、次に出てきたのはタルトだった。

「コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?」
「紅茶がいいです。というかタルトまで…!」
「お誕生日ですから。いちごのタルト、お好きですよね?」
「好きです!」

 確かに、デザートとして頼むものはタルトが多かった。いちごがぎっしりと敷き詰められたタルトが、照明に照らされてキラキラしていた。

「どのくらい食べます?お好きなだけ切り分けますよ。」
「4分の1くらいでお願いします。」
「はい。」

 食い意地を少し張った大きさをお願いしてしまうくらいには食べたいタルトだ。今までお店で出ていたものと少し違う気がする。

「オーナーは?」
「同じく4分の1もらおうかな。余った分は持ち帰りますか、湯本さん。」
「え、いいんですか?」
「お誕生日ですから。ね、健人。」
「綾乃さんが良ければ、どうぞ。」
「ありがたくいただきます。嬉しいです。」

 紅茶の良い香りがふわりと鼻をかすめた。

「いただきます。…ん…!美味しい~!」
「甘さ、丁度良いですか?あんまり甘くしないようにはしたんですけど…。」
「とっても美味しいです!甘さ控えめなのもありがたいです。パクパク食べれちゃう。」

 綾乃の言葉に、健人が小さくほっと、息をはいた。和食もそうだが、誕生日という特別な日に、ちゃんと好きなものを渡したかった。綾乃を見ると、じっくりと噛みしめながら頬張っている。美味しそうに食べてくれる様子に安堵した。

「湯本さんは、果物だといちごが好きなんですか?」
「果物ですか?そうですね…。果物は結構割と何でも好きなんですけど、スイーツとしてだといちご味のものとか、いちごがのってるものを選びがちかもしれません。」
「洋食よりも和食派ですか、実は?」
「どちらも好きですけど、お二人の作る和食が食べたくて。普段お店では洋食をいただいているので、和食はどんな感じになるかなという好奇心で、今日はお願いしました。…普段の食生活だと多分割合は半々くらいですね。」

 オーナーと綾乃の会話を聞きながら、綾乃の好きなものを一つずつ知っていく。いちごのタルトにしたのは正解。和食の好きなメニューはオーダーされたもの。そしておそらく、他にも好きなものはある。
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