二人の歩幅が揃うまで
* * *
「僕の部屋でもリビングでも、どちらでもお好きな方にいてくださいね。」
「ありがとな。」
健人は瑠生に背を向け、風呂に向かう。瑠生はリビングにいることを選び、ソファーに座った。するとキッチンの方から声がした。
「お湯の温度は大丈夫でしたか?」
「あ、はい。丁度よかったです!」
「それはよかった。何か飲まれますか?アルコールも少々ございますよ。」
「健人はあー…そっか。まだ飲めないかぁ。」
「そうなんですよね。瑠生さんはお強いですか?」
「まぁ綾乃よりは強いですよ。あ、そっちに行ってもいいっすか?」
「ええ、もちろん。」
オーナーはにこにこと瑠生の挙動を眺めている。
「え、なんか面白いことしてますか、俺。」
「いえ。ただ、興味津々の目が湯本さんに似てるなと思いまして。」
「さっき健人にも言われたんすけど、そんなに似てます?」
「顔がとかそういうことじゃなくて、雰囲気とかそういう感じですかね。さて、どれがいいですか?」
「うわ、なんだこのオシャレそうなワイン!」
「サングリアですね。ちょっと作ってみました。」
「買うんじゃなくて作る…?」
「一応、飲食店を経営してますので、作ることは得意ですよ。」
「へぇ~…じゃあこれいただこうかな。これをお願いします。」
「はい。じゃあとりあえずお試しくらいということで、このくらいにしますね。もっと飲めそうでしたら仰ってください。」
「ありがとうございます。」
オーナーからグラスを受け取ってちびちび飲み始める。同じくサングリアを飲み始めたオーナーがキッチンから声を掛けた。
「つかぬことをお聞きしますが。」
「はい。」
「健人と湯本さんの関係についてはお聞きですか?」
「はい。綾乃がばっちり、彼氏だって言ってました。」
「そうですか。…何か、不安な点や気になる点はありますか?」
「まぁ経緯というか、流れは気になりますけど、…でも、健人が綾乃のことすげー大事にしてるのが何となくわかったから、ちょっと安心してます。」
「…良かったです。」
「あ、なんかいきなり突撃してきたからっすよね?健人を怪しんでじゃなくて、健人ともうちょい仲良くなりたくてって感じで。別の機会でもいいっちゃいいんすけど、まぁ色々言うなら早い方がいいかなって。」
「色々言う?」
瑠生は頷いた。
「悪い話とかじゃなくて、綾乃のことで…そうだなぁ…綾乃をこういう風に大事にしてほしいっていう俺なりの願いを、健人には聞いてもらいたいなって。」
瑠生がそう言った瞬間、健人がソファー前のテーブルに置いていったスマートフォンが震えた。
「綾乃じゃん。ってか健人、スマホロックしてねーし。」
そう言っておもむろに瑠生がスマートフォンを耳に当てた。
「なにー?どうしたー?」
『は!?なんで瑠生が出るの!?』
「健人、今風呂ー。」
『ねぇ、ちゃんとおとなしく過ごしてるよね?』
「うん。サングリアいただいた。」
『えっ!ずるい!』
「まじでこれ美味い。手作りなんだって。」
『オーナーさんの手作りのサングリアなんて美味しいに決まってるじゃん!瑠生のバカ!』
「あっ!瑠生さん?綾乃さんからですかもしかして。」
「そうそう。綾乃?健人、風呂から戻ってきた。」
瑠生は健人にスマホを渡す。健人はそれを受け取ると、濡れたままの髪をタオルでごしごしやりながら、自室に戻っていく。それを見つめた瑠生とオーナーは目を見合わせて笑った。
「ははっ!今の健人、すっげぇ可愛くないっすか?」
「年相応の可愛さでしたね。」
「ね!」
「僕の部屋でもリビングでも、どちらでもお好きな方にいてくださいね。」
「ありがとな。」
健人は瑠生に背を向け、風呂に向かう。瑠生はリビングにいることを選び、ソファーに座った。するとキッチンの方から声がした。
「お湯の温度は大丈夫でしたか?」
「あ、はい。丁度よかったです!」
「それはよかった。何か飲まれますか?アルコールも少々ございますよ。」
「健人はあー…そっか。まだ飲めないかぁ。」
「そうなんですよね。瑠生さんはお強いですか?」
「まぁ綾乃よりは強いですよ。あ、そっちに行ってもいいっすか?」
「ええ、もちろん。」
オーナーはにこにこと瑠生の挙動を眺めている。
「え、なんか面白いことしてますか、俺。」
「いえ。ただ、興味津々の目が湯本さんに似てるなと思いまして。」
「さっき健人にも言われたんすけど、そんなに似てます?」
「顔がとかそういうことじゃなくて、雰囲気とかそういう感じですかね。さて、どれがいいですか?」
「うわ、なんだこのオシャレそうなワイン!」
「サングリアですね。ちょっと作ってみました。」
「買うんじゃなくて作る…?」
「一応、飲食店を経営してますので、作ることは得意ですよ。」
「へぇ~…じゃあこれいただこうかな。これをお願いします。」
「はい。じゃあとりあえずお試しくらいということで、このくらいにしますね。もっと飲めそうでしたら仰ってください。」
「ありがとうございます。」
オーナーからグラスを受け取ってちびちび飲み始める。同じくサングリアを飲み始めたオーナーがキッチンから声を掛けた。
「つかぬことをお聞きしますが。」
「はい。」
「健人と湯本さんの関係についてはお聞きですか?」
「はい。綾乃がばっちり、彼氏だって言ってました。」
「そうですか。…何か、不安な点や気になる点はありますか?」
「まぁ経緯というか、流れは気になりますけど、…でも、健人が綾乃のことすげー大事にしてるのが何となくわかったから、ちょっと安心してます。」
「…良かったです。」
「あ、なんかいきなり突撃してきたからっすよね?健人を怪しんでじゃなくて、健人ともうちょい仲良くなりたくてって感じで。別の機会でもいいっちゃいいんすけど、まぁ色々言うなら早い方がいいかなって。」
「色々言う?」
瑠生は頷いた。
「悪い話とかじゃなくて、綾乃のことで…そうだなぁ…綾乃をこういう風に大事にしてほしいっていう俺なりの願いを、健人には聞いてもらいたいなって。」
瑠生がそう言った瞬間、健人がソファー前のテーブルに置いていったスマートフォンが震えた。
「綾乃じゃん。ってか健人、スマホロックしてねーし。」
そう言っておもむろに瑠生がスマートフォンを耳に当てた。
「なにー?どうしたー?」
『は!?なんで瑠生が出るの!?』
「健人、今風呂ー。」
『ねぇ、ちゃんとおとなしく過ごしてるよね?』
「うん。サングリアいただいた。」
『えっ!ずるい!』
「まじでこれ美味い。手作りなんだって。」
『オーナーさんの手作りのサングリアなんて美味しいに決まってるじゃん!瑠生のバカ!』
「あっ!瑠生さん?綾乃さんからですかもしかして。」
「そうそう。綾乃?健人、風呂から戻ってきた。」
瑠生は健人にスマホを渡す。健人はそれを受け取ると、濡れたままの髪をタオルでごしごしやりながら、自室に戻っていく。それを見つめた瑠生とオーナーは目を見合わせて笑った。
「ははっ!今の健人、すっげぇ可愛くないっすか?」
「年相応の可愛さでしたね。」
「ね!」