財閥御曹司と交わした一途な約束

『五年後。必ず迎えにえ来る』
　黒々とした瞳が向けられた。
　その視線は炎のように熱く、溶けてしまうのではないかと思った。
『連れて帰りたいところだが、今の俺はまだ頼りなさすぎる。立派な大人になって戻ってくるから、俺を忘れないで待っていてほしい』
　心臓の鼓動が暴れた。
　彼の言葉に嘘はなく真実に聞こえた。
　私はかすかに頷いた。
　翌日、彼は東京に戻ってしまったけれど、ずっと忘れられずに毎日を過ごしていた。
　一ヶ月後、手紙が届き、慌てて読んだ。
　私の体を気遣うことと、いつか迎えに行くという内容だった。
　彼は、約束を果たしてくれる。そんな気がしていたのだ。
『待っています』と返事をしようとしたが、母親に手紙が見つかってしまった。
　睨みつけられ、ペンを取ることは許されなかった。
『財閥の御曹司なんだ。まさか本気で受け止めてるんじゃないだろうね？　あんたは私たちが決めた人と結婚する運命だよ。諦めなっ』
　それからも、毎日のように思い出していた。
　でも、結ばれる運命ではない。
　悲しいけれど、記憶から消そうと考えないようにしていたのに……。


　ある日の朝、私は白無垢に着替えさせられた。