あなたと想いが通い合う日を私、……ずっと待ってたはずなのに

第5話 名前が好きだ

「あのさ。佐藤ありがとう。嬉しいよ。だけど俺、恥ずかしいや」 
「えっ」

 私は大地からぱっと離れた。
 大地も私も顔が赤くなって下を向いていた。

「なあ、佐藤のこと菜保子って呼んでもいいか?」
 
 私はベンチに置いたバッグを持ち上げながら「私、自分の名前好きじゃないんだ」と返事をした。

「知ってる。だけど俺は佐藤の名前好きだよ」
「えっ?」

 大地が私の名前を好きだって言ってくれた。

 私は飛び上がるほど嬉しかった。

 名前だけじゃなくて私のことも大地に「好きだ」って言ってもらえた気がした。
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop