異世界最速の魔王討伐 ~転生幼女と美少女奴隷の隠されたミッション~
24. 心臓を撃て
『何やってんだ! 国王捕まえて褒章をもぎ取れ!』
蒼は真っ赤になって檄を飛ばす。
『えーー……。でも、何だか忙しそうですよ?』
『バッカモーン! 解呪の魔道具がもらえなきゃ僕らは死んじゃうんだぞ! 死ぬ気でゲットだ!』
蒼は自分のひざをピシピシ叩きながらムーシュを指さした。
『アイアイサー!』
皆がバタバタと走り回る中、ムーシュは人をかき分け頑張って国王に駆け寄る。
「お、王様! 王国の敵を倒しました! ほ、褒章はいただけるんですよね?」
しかし、国王は面倒くさそうにあしらう。
「今はそれどころじゃないじゃろ!」
ムーシュは焦った。このままうやむやにされてしまったら自分も死んでしまうのだ。
『何やってんだ! 脅せ! 王国を救った英雄を邪険にするのか? 他国に行くぞ! とか何とか喚いて褒章をもぎ取れ!』
蒼は椅子の上でピョンピョン飛びながら怒った。
『くぅ……。そうですよね……』
ムーシュは何度か深呼吸をすると小悪魔の笑みを浮かべ、再度国王に絡む。
「ちょっとお待ちください……。王国の危機を救ったSランク冒険者を……邪険にしていいんですの?」
「じゃ、邪険になど扱って……」
「魔人から王国を救ったSランク冒険者……、他国から引く手あまたですのよ? ふふっ」
ムーシュは王様に迫ると上目遣いで脅す。
「くぅ……。な、何が欲しいんじゃ?」
ムーシュには怪しい点も多いが、魔人の文官を見つけ出して倒した功績は大きい。他国にとられるのは安全保障上避けたかった。
「うふっ、ありがとうございます。解呪の魔道具が欲しいのです」
ムーシュは王様の手を取ると前かがみになって胸の谷間を強調する。こうすると男はどうしても谷間を見てしまう生き物なのだ。
国王もつい見てしまい、視線が泳いでしまう。
「か、解呪……? あれは初代国王の賜った国宝……。うー、まぁいいじゃろ。おい、宝物管理官! ちょっと来い!」
国王は顔をしかめながら担当者を呼んだ。
ムーシュはグッとガッツポーズして蒼にウインクを飛ばす。
蒼は安堵のため息を漏らしながらペタリと椅子に座り込むと、サムアップで応えた。
こうして蒼はついに待望の解呪の魔道具を手に入れることに成功したのだった。
◇
手の込んだ装飾が美しい骨董品の木箱を蒼はゆっくりと開けた――――。
「こ、これが解呪の魔道具……?」
中に横たわっていたのは、闇夜の星の如く微かに輝く、いぶし銀の拳銃だった。その表面には、極めて精緻に施された彫刻があり、一瞬で蒼の目を奪った。月桂樹の葉に囲まれた中に生命力に満ちた幻獣が仁王立ちになっている彫刻で、その瞳は、何世紀もの時間を超え、今にも動き出しそうな強烈な力を宿している。
おぉぉぉぉ……。
蒼は拳銃を取り出し、そのずっしりとした重みに頼もしさを感じた。銀製であろう銃身はひんやりとして、それでいて心の奥底をたぎらせる不思議な力を感じさせる。
箱には別にクリスタルの弾が一発入っていて、これで呪われた人を撃てということらしい。
「これ、どう使うんですか?」
拳銃を見たことの無いムーシュは首をかしげる。そう、魔法の発達したこの世界には火薬がないので拳銃もない。だから、拳銃の形をしている時点で女神の関わった品というのは間違いなかった。
「弾を撃つ道具なんだよ」
蒼は古びた説明書きを広げる。紙片は時の重みでボロボロとなり、文字は風化していたが、何とかぎりぎり読めなくもない。
「えーと……『心の臓に月の力を得た弾を射つれば、呪いは解かれん』……。えっ、心臓を撃てって事!? マジかよ……」
蒼は宙を仰いだ。この言葉通りであれば心臓を撃ってもらわないといけないわけだが、失敗したら死んでしまうのではないだろうか?
ムーシュは拳銃の表面の彫刻をのぞきこみ、その精巧さに目を奪われる。
「うわぁ、綺麗ですねぇ……」
蒼はそんなキラキラした瞳のムーシュをジト目で見る。これで撃たれる者の気持ちを少しは分かってもらいたかったのだ。
ふぅと大きくため息をついた蒼はムーシュの顔を押しやり、
「ちょっと試すからどいて……」
そう言って弾を込めてみる。
モミジのような蒼の手では引き金に指は届かないので、両手を使ってベッドに向けて引き金を引いた――――。
カチ……。
かすかに金属音が響いたが何も起こらなかった。月光を浴びないと弾も出ないらしい。
やはり夜を待たねばならない。幸い今日は天気もいいし、満月も近くてコンディションとしては最高である。
夜になったらこれでムーシュに心臓を撃ち抜いてもらう……。蒼はそのシーンを想像してゾクッとした。
「はぁ……、これ本当に大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ、初代国王が女神から下賜された魔道具の中の一つらしいですよ。女神が創ったのだからバッチリですよ!」
ムーシュはグッとこぶしを握り、純真無垢な笑みを浮かべた。
「女神製ねぇ……」
蒼は渋い顔で銃身の彫刻をじっと見入る。幻獣の目はただ静かに煌めきを浮かべていた。
蒼は真っ赤になって檄を飛ばす。
『えーー……。でも、何だか忙しそうですよ?』
『バッカモーン! 解呪の魔道具がもらえなきゃ僕らは死んじゃうんだぞ! 死ぬ気でゲットだ!』
蒼は自分のひざをピシピシ叩きながらムーシュを指さした。
『アイアイサー!』
皆がバタバタと走り回る中、ムーシュは人をかき分け頑張って国王に駆け寄る。
「お、王様! 王国の敵を倒しました! ほ、褒章はいただけるんですよね?」
しかし、国王は面倒くさそうにあしらう。
「今はそれどころじゃないじゃろ!」
ムーシュは焦った。このままうやむやにされてしまったら自分も死んでしまうのだ。
『何やってんだ! 脅せ! 王国を救った英雄を邪険にするのか? 他国に行くぞ! とか何とか喚いて褒章をもぎ取れ!』
蒼は椅子の上でピョンピョン飛びながら怒った。
『くぅ……。そうですよね……』
ムーシュは何度か深呼吸をすると小悪魔の笑みを浮かべ、再度国王に絡む。
「ちょっとお待ちください……。王国の危機を救ったSランク冒険者を……邪険にしていいんですの?」
「じゃ、邪険になど扱って……」
「魔人から王国を救ったSランク冒険者……、他国から引く手あまたですのよ? ふふっ」
ムーシュは王様に迫ると上目遣いで脅す。
「くぅ……。な、何が欲しいんじゃ?」
ムーシュには怪しい点も多いが、魔人の文官を見つけ出して倒した功績は大きい。他国にとられるのは安全保障上避けたかった。
「うふっ、ありがとうございます。解呪の魔道具が欲しいのです」
ムーシュは王様の手を取ると前かがみになって胸の谷間を強調する。こうすると男はどうしても谷間を見てしまう生き物なのだ。
国王もつい見てしまい、視線が泳いでしまう。
「か、解呪……? あれは初代国王の賜った国宝……。うー、まぁいいじゃろ。おい、宝物管理官! ちょっと来い!」
国王は顔をしかめながら担当者を呼んだ。
ムーシュはグッとガッツポーズして蒼にウインクを飛ばす。
蒼は安堵のため息を漏らしながらペタリと椅子に座り込むと、サムアップで応えた。
こうして蒼はついに待望の解呪の魔道具を手に入れることに成功したのだった。
◇
手の込んだ装飾が美しい骨董品の木箱を蒼はゆっくりと開けた――――。
「こ、これが解呪の魔道具……?」
中に横たわっていたのは、闇夜の星の如く微かに輝く、いぶし銀の拳銃だった。その表面には、極めて精緻に施された彫刻があり、一瞬で蒼の目を奪った。月桂樹の葉に囲まれた中に生命力に満ちた幻獣が仁王立ちになっている彫刻で、その瞳は、何世紀もの時間を超え、今にも動き出しそうな強烈な力を宿している。
おぉぉぉぉ……。
蒼は拳銃を取り出し、そのずっしりとした重みに頼もしさを感じた。銀製であろう銃身はひんやりとして、それでいて心の奥底をたぎらせる不思議な力を感じさせる。
箱には別にクリスタルの弾が一発入っていて、これで呪われた人を撃てということらしい。
「これ、どう使うんですか?」
拳銃を見たことの無いムーシュは首をかしげる。そう、魔法の発達したこの世界には火薬がないので拳銃もない。だから、拳銃の形をしている時点で女神の関わった品というのは間違いなかった。
「弾を撃つ道具なんだよ」
蒼は古びた説明書きを広げる。紙片は時の重みでボロボロとなり、文字は風化していたが、何とかぎりぎり読めなくもない。
「えーと……『心の臓に月の力を得た弾を射つれば、呪いは解かれん』……。えっ、心臓を撃てって事!? マジかよ……」
蒼は宙を仰いだ。この言葉通りであれば心臓を撃ってもらわないといけないわけだが、失敗したら死んでしまうのではないだろうか?
ムーシュは拳銃の表面の彫刻をのぞきこみ、その精巧さに目を奪われる。
「うわぁ、綺麗ですねぇ……」
蒼はそんなキラキラした瞳のムーシュをジト目で見る。これで撃たれる者の気持ちを少しは分かってもらいたかったのだ。
ふぅと大きくため息をついた蒼はムーシュの顔を押しやり、
「ちょっと試すからどいて……」
そう言って弾を込めてみる。
モミジのような蒼の手では引き金に指は届かないので、両手を使ってベッドに向けて引き金を引いた――――。
カチ……。
かすかに金属音が響いたが何も起こらなかった。月光を浴びないと弾も出ないらしい。
やはり夜を待たねばならない。幸い今日は天気もいいし、満月も近くてコンディションとしては最高である。
夜になったらこれでムーシュに心臓を撃ち抜いてもらう……。蒼はそのシーンを想像してゾクッとした。
「はぁ……、これ本当に大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ、初代国王が女神から下賜された魔道具の中の一つらしいですよ。女神が創ったのだからバッチリですよ!」
ムーシュはグッとこぶしを握り、純真無垢な笑みを浮かべた。
「女神製ねぇ……」
蒼は渋い顔で銃身の彫刻をじっと見入る。幻獣の目はただ静かに煌めきを浮かべていた。