528ヘルツの大好き

「ほら、森さんってSNSに投稿するくらい朗読が得意だったみたいだから」

「だから、あれは違うってば……こんなの、困るよ……」

「えー? 声が小さくてよく聞こえないけど、応募してくれてありがとう、って言ってる?」

「せ、先生に言って取り消してもらう……」

「そういえば、応募は昨日で締め切りだったから、もう取り消し出来ないって先生言ってたよ! 良かったね、ギリギリで間に合って!」

 膝がガクガクして、その場で座り込んでしまいそうだった。

「朗読動画投稿してる『ヨム』なんだから、朗読コンテストなんて楽勝でしょ!」

「あ〜! あの『ヨム』が参加する朗読コンテストなんて超レアじゃない?」

「頑張ってね『ヨム』! 応援してるから!」

 剛里希星の取り巻きたちが、てんで勝手に囃し立て始めた。教室にいるクラスメイトたちは、聞いているのに聞いていないフリ。

 『ヨム』なんて、顔出しもしてないし、匿名性の高いSNSだから出来た事。『森文香』として大勢の前で朗読するなんて、とても無理だ。

 だめだ、泣きそう。それに上手く息が出来ない……
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