528ヘルツの大好き
「あー! やっぱりいた〜!」
突然、聞いた事のある甲高い声がした。見ると、そこにいたのは剛里希星。並んで男の人が立っているのは、きっと噂のお兄さん。私を見てニヤニヤしてるから、私の事は剛里さんに話を聞いているんだろう。
お兄さんも本選に出場するんだ。
「森さん、予選通ったって担任に聞いたから探してたんだ〜! あたしは今日はお兄ちゃんの付き添い! だから控え室入れたの。でも……」
剛里さんは私の隣に立っている朔間くんをちらり。不思議そうに不機嫌そうに、眉を歪めた。
「どうして朔間くんが一緒にいるの?」
朔間くんが私を手伝ってくれてた事は、剛里さんには知らせていない。言ったら絶対に邪魔されそうだったから。上手く出し抜けた事に少しスッとした。
「剛里と同じだよ」
朔間くんが言った。
「俺が森さんの付き添い」
「なにそれ! 聞いてないし!」
「剛里には関係ないし、言う必要もない」
朔間くんのストレートな言葉に、剛里さんは黙り込む。顔は真っ赤だけど、キュッと結んだ口と睨むような目。絶対怒ってる。
「まあまあ、希星。誰が付き添いだっていいじゃんか。それより、キミ」
横から剛里さんのお兄さんが口を出してきた。『キミ』って、私の事? 目が合ってしまった。