528ヘルツの大好き
やっぱり、やっぱりこんな所に私なんかが来ちゃいけなかったんだ。お兄さんの言った通り、まぐれで予選通っちゃったから、のこのこ来てしまったけど。自信なんて無いし場違い。
せっかく朔間くんに協力してもらってここまで来たけど、辞退して帰った方がいいのかもしれない……
「貴方は、声優になりたいの?」
不意に、さっき助けてくれたおじさんが私にそう言った。私は顔も上げずに頭を振った。
「そうか……でも、そうだな、貴方は声優よりナレーションや朗読をやったほうがいい」
「え……?」
意外な言葉に驚いて顔を揚げると、おじさんは優しい表情でこちらを見ていた。
「印象的で耳にスッと入ってくるその声。とても素敵だと思いますよ。声を使う仕事を将来してもしなくても、きっと貴方の財産になる」
「財産……?」
「まだ中学生だ。いろいろな事に挑戦して、頑張ってください」
なんだろう、このおじさん……励まして、くれたのかな……?
私がポカンとしているうちにおじさんは、呼びに来た誰かと一緒に控室を出ていってしまった。
自分の声が大嫌いだけれど、それはいつか大好きになるの? 財産になる、ってそういう事?
よく分からなかったけど、おじさんの言葉は私の心にポツリと残った。
◇
せっかく朔間くんに協力してもらってここまで来たけど、辞退して帰った方がいいのかもしれない……
「貴方は、声優になりたいの?」
不意に、さっき助けてくれたおじさんが私にそう言った。私は顔も上げずに頭を振った。
「そうか……でも、そうだな、貴方は声優よりナレーションや朗読をやったほうがいい」
「え……?」
意外な言葉に驚いて顔を揚げると、おじさんは優しい表情でこちらを見ていた。
「印象的で耳にスッと入ってくるその声。とても素敵だと思いますよ。声を使う仕事を将来してもしなくても、きっと貴方の財産になる」
「財産……?」
「まだ中学生だ。いろいろな事に挑戦して、頑張ってください」
なんだろう、このおじさん……励まして、くれたのかな……?
私がポカンとしているうちにおじさんは、呼びに来た誰かと一緒に控室を出ていってしまった。
自分の声が大嫌いだけれど、それはいつか大好きになるの? 財産になる、ってそういう事?
よく分からなかったけど、おじさんの言葉は私の心にポツリと残った。
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