528ヘルツの大好き
 あと三人。子供部門が二人、そのあと中高生部門が始まるから、その二人目が私だ。もう待機していなさいってスタッフさんに言われ、舞台袖にいる。

 控え室で剛里兄妹に酷いことを言われ、出るのを辞めようかと思ったけど……あのおじさんの言葉がポツンと心に残っている。

 ――きっと貴方の財産になる。

 本当にそうなんだろうか。それを確かめてみたくもあった。

 そして出場への最後の一押しをしてくれたのは、朔間くん。

 迷っているなら出た方がいい。

 そう言ってくれたんだ。

 だから私は今、舞台袖にいる。朔間くんは付き添いだから控え室で別れ、一人になってしまった。

 だけど……早々と舞台袖に来てしまった事をもう後悔している。

 ここではステージの朗読の声が直接聞こえてくる。子供部門なのにみんなとても上手くて、やっと絞り出してる自分の中の自信がどんどんなくなっていくのが分かる。

 膝がガクガクしそうなくらい、怖い……
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