528ヘルツの大好き
 そこで朔間くんは黙ってしまったから、私はそうっと目を開けてみた。ステージから溢れてくるライトの明かりに照らされて、朔間くんは真っ赤な顔でじっと私を見ていた。

 きっと、私の顔も真っ赤だ。

「森さんの声、俺には528ヘルツなんだ。だから、絶対に大丈夫!」

 朔間くんは両手をギュッと握ってくれた。男の子っぽい、大きなゴツゴツした手。

 感じる温もりが、私を安心させてくれる。

「……ありがとう、朔間くん」

 奇跡の周波数……本当にそうなれるといいな。

「うん、頑張れ! 観覧席から見てるから」

 朔間くんはそう言うと手を離し、台本を渡してくれた。そして席の方へ戻っていった。

 まだ……心臓がドキドキしてるけど、これは緊張とは違うもの。もっと温かくて優しい感情……

 ステージの方からパチパチと拍手の音が聞こえてきた。子供部門が終わったようだった。





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