528ヘルツの大好き

05*大好き

「お母さん、おはよう！」

「おはよう、文香。今日は早いのね」

　いつもより一時間も早く起きてしまった。だって、興奮して全然眠れなかったから。

　朗読コンテストは昨日無事に終わった。

　剛里希星のお兄さんは、ステージでも自信満々だった。だけど目立とうとしてやり過ぎてしまい、朗読の最中に効果音付けたりしちゃって規定違反で失格になっていた。

　私の順位は……残念ながら3位までには入れなかったけれど。

　でも、努力賞という賞を貰えたんだ。

　小さな小さな賞だけど、凄く嬉しくて。すぐに朔間くんと喜びを分かち合いたいと思ったのに、コンテストが終わって担任の先生と一緒にいるはずの朔間くんの所へ行ったけど、彼の姿はもう無かった。

　コンテストが終わったから、もう用が無いって思ったのかな。朔間くんとの関係も、これで終わり……

　そんなふうに思ったけど、思いもかけない事を先生から聞かされた。

「朔間、表彰式が終わったとたん、これから陸上部に入るって言って、急いで帰ったぞ」

　何がきっかけになったのかは分からない。でも、朔間くんはまた陸上をやる事に決めたんだ！

　それが自分の事のように嬉しい。

　すぐに朔間くんを追って学校へ行こうと思ったけど、それはやめておいた。

　きっと一人で、陸上が大好きって事を確かめたいと思うから。ぎゅうっと心に抱きしめたいと思うから。

　自分だったら、そうだから……