528ヘルツの大好き
 中学生になった今でもそれは続いている。

 今のクラスでも、いじめっ子気質の陽キャが私のコンプレックスをめざとく見つけ、ゆるイジメみたいになっている。表立って悪口を言われたりはしないけれど。

 ゆるゆると、真綿を締めるようなイジメ。

 蚊の鳴くような声を出す度からかわれ、笑われ。それだけだけど、小さなストレスは徐々に私の中に溜まり、そしてますます私は口を噤む(つぐむ)

 私は自分の声が大嫌いだ。

 やがてチャイムが鳴り、私にとって地獄みたいな国語の授業は終了。それだけでホッとする。

 次は体育で、男女合同で来月あるマラソン大会の練習らしいから、大きな声が必要にはならないだろう。

 着替える為にみんなガタガタと動き出す。男子はこの教室だけど、女子はひとつ上の階にある多目的教室だ。私も着替えに行こうと立ち上がった。

 みんな友達同士グループになって教室を出ていくけど、私はひとり。誘ってくれる友達なんていなかった。私に関わって面倒な事になるのを、みんな避けているんだ。

 この声のせいで友達も出来ない……

 ふっと、私の横を誰かが通り過ぎていった。すれ違った時に揺れた空気が流れてゆく方へ反射的に視線を向けると、見えたのは教室を出てゆくひとりの男子の背中。

 もうジャージ姿だった。着替えるの早いな。
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