528ヘルツの大好き
 姿勢がよくてスラッとしてて高身長。サラサラな髪は少し日に焼けて赤茶色。その背中の持ち主を、私は顔を見なくても分かった。

 ――朔間蒼太(さくまそうた)

 二学期の途中、この前転校してきた男子だ。

 前の学校では陸上部で全国大会に出るくらいだったらしいけど、今は陸上どころかなんの部活もしていない。クラスの陸上部の子たちや、顧問の先生が時々教室まで勧誘に来ているのを見るが、全部断っているみたいだった。

 怪我もしてないようなのにどうして入部しないのかな。無口であまり喋らないし、笑ったところも見たことない。いつもひとりでいる。

 でもひとりでいる事には苦痛を感じないみたいだ。よく教室の窓際の一番後ろの自分の席で、本を読んでいる。そんな姿がクールでかっこいいって、そういうのが好きな女子に少し人気があるみたい。

 つるまなくて一人ぼっちでも動じないなんて、いいなあって思う。

 私はみんながグループ作ってると自分だけ浮いていてなんだか気まずいし、自分も誰かといないといけない様な気がしちゃうのに。

 だから、朔間くんがちょっと羨ましい。

 自分の器の小ささにため息をひとつ零すと、着替える為に多目的教室へ向かった。





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