本当は誰よりも可愛い君。~君の全てを守りたいから
 断りたいなって気持ちがずっと頭の中に浮かんでいたんだけど、結局参加する方向になって……。

 ついに映像を撮る日になってしまった。

 放課後体育館の舞台に行くと、コンテストに出場する人たちが集まっていた。

 想像した通り、今年もみんな華やかな人たちだった。華やかな人たちしかいない。

 私たちを除いては――。

 自分たちだけが地味。女子はセーラー服、男子は黒い学ラン。みんな同じ制服を着ているのになんでこんなに私たちと違うんだろう。

 自分たちの空気だけが周りと違うという事実をリアルで感じて、私の心が縮こまっていく。

 同じクラスの花田さんと桐生くんもいた。ふたりは優勝候補で、華やかなメンバーの中でも更に目立っている。

 ふたりはこっちを見ながらコソコソと何かを話した後、小馬鹿にしたように鼻で笑っていた。

 絶対に私のことを言ってる。

 私の悪口を言っているふたりを見ていると、周りと空気が違うだけではなく、まるで自分だけが別の世界にいるように感じてきた。

――本当に場違い。私のいる場所じゃない。

 考えていると、さーっと血の気が引いてきて、周りの音が聞こえなくなってきた。自分の心臓の音だけが大きく聞こえてくる。

 どうしよう、怖い――。

 そう思っていると背中をぽんと優しく叩かれた。陽大くんだった。目が合うと彼は「大丈夫だよ」ってささやきながら微笑んでくれた。

 陽大くんのおかげで周りの音が戻ってきた。私も「うん」ってうなずいた。

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