本当は誰よりも可愛い君。~君の全てを守りたいから
 陽大くんも私と同じ、地味なタイプ。

 私たちが所属している手芸部は、5人の部員がいる。ここは全校生徒が400人ぐらいいる学園だから、割合的には少人数な部だと思う。

 被服室で作業をするんだけど、陽大くんとふたりきりになってそれぞれの作業をする時もあって。彼も私も静かに作業をするタイプだから、すごく集中出来て。そして彼と同じ空間にいるのが心地よい。

 陽大くんの背中を眺めていると、くるりと振り向いてこっちに戻ってきた。

「一緒に出ない?」

 陽大くんから1枚のプリントをもらった。

「何これ」
「変身コンテスト参加申込のプリントだよ。職員室前に置いてあったやつ」
「あぁ、こないだ職員室前でちらっと見たけど素通りしたプリントだ」

『変身コンテスト』。私には縁のないコンテストかな……。

 私が通っている学園では、大きく分けると生徒がふたつの層に分かれていて。

 主に大企業の社長が親だったり、美男美女だったりする、華やかな生徒たち。

 そしてそうでもない生徒や私みたいな地味な生徒たち。

 変身コンテストは学園で毎年行われている行事。華やかな生徒たち、しかもその中でも更にトップレベルの人たちだけそのコンテストに出ている。彼女たちがパフォーマンスをして、他の生徒たちが楽しむお祭りみたいなイベントだった。

「これ、出なくても一応参加者のところに名前書いといて?」
「出なくても? う、うん。分かった」

「じゃあね」と言うと陽大くんは早歩きで玄関から出ていった。
 
――陽大くんから何か誘ってくるのって、初めてだよね?

 今もらったプリントをきちんと読んでみた。



 
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