王は断罪し、彼女は冤罪に嗤う
手は離れ、栗色の髪が肩の上で左右に揺れる。
「ナタリア? ああ、王妃という立場なら気にしなくてよいのだ。王太子始め余の子らはすでに政務をこなしておる、だからそなたはただ余を癒しさえしてくれれば――」
「お断りします。生理的に無理なので」
ナタリアはにっこりと笑み、小首を傾げた。国王の言葉を拒否したとは思えない、穏やかで自然な態度。
誰かが息を呑む音が聞こえるようだった。王族の、国王の決めたことを否定するなど、誰にも出来ないはずだというのに。
この娘は頭がおかしいのかと、今まさにその権力に貶められているライサでさえもが思った。
「何を言っておるのだ、愛しい人よ。我らの間には真実の愛があるではないか」
不審げに眉根を寄せたエフレムの発言に、ナタリアが小さく吹き出し、さもおかしそうに細い肩を震わせる。
「真実の愛」
うふふ、と笑う声は可憐で、静まり返る大広間に軽やかに響く。
何がおかしい、と目を吊り上げるエフレムは、怒りを露わにしながらもどこか訝しげな表情を浮かべている。誰もがひれ伏すのが当たり前に生きてきた彼にとって、完全に異常な展開だった。
「ナタリア? ああ、王妃という立場なら気にしなくてよいのだ。王太子始め余の子らはすでに政務をこなしておる、だからそなたはただ余を癒しさえしてくれれば――」
「お断りします。生理的に無理なので」
ナタリアはにっこりと笑み、小首を傾げた。国王の言葉を拒否したとは思えない、穏やかで自然な態度。
誰かが息を呑む音が聞こえるようだった。王族の、国王の決めたことを否定するなど、誰にも出来ないはずだというのに。
この娘は頭がおかしいのかと、今まさにその権力に貶められているライサでさえもが思った。
「何を言っておるのだ、愛しい人よ。我らの間には真実の愛があるではないか」
不審げに眉根を寄せたエフレムの発言に、ナタリアが小さく吹き出し、さもおかしそうに細い肩を震わせる。
「真実の愛」
うふふ、と笑う声は可憐で、静まり返る大広間に軽やかに響く。
何がおかしい、と目を吊り上げるエフレムは、怒りを露わにしながらもどこか訝しげな表情を浮かべている。誰もがひれ伏すのが当たり前に生きてきた彼にとって、完全に異常な展開だった。