頬を染めるのは、イルミネーションのせいだけではないのです
頬を染めるのは、イルミネーションのせいだけではないのです
「おお…コンビニまでもがクリスマス一色…」
24日のクリスマスイブが、ちょうど一週間後に迫っていた。
駅前の街路樹や桜並木には、色とりどりの電飾が光り、コンビニやスーパー、ショッピングモールなどはクリスマス商品で賑わっている。世はまさにクリスマス一色である。赤や緑色の字体で、真っ白なケーキの販促ポスターが至る所に貼られている。
「もう来週だもんなぁ…クリスマス」
授業を終えた放課後、学校からほど近いコンビニへと入った私、白雪 聖那(しらゆき せいな)は小さなため息を零す。
今年も去年と変わらず、恋人のいないクリスマスだ。今まで彼氏がいたことなんて一度もないけれど…。
クリスマスは家族で過ごす行事だと言うことは分かっている。外国映画などでは、家族や親戚中が集まって、楽しく過ごしている場面がよく描かれている。
しかしどういう訳か、日本のクリスマスは、家族で過ごす日、と言うよりは、恋人と過ごす日、というようなイメージが強い気がする。だからなのか、恋人がいない私にとっては、なんだかもの寂しいような気になってしまって、好きな人と過ごせる人たちが、少し羨ましく感じてしまう。
日本の風習を悪く言うつもりはもちろんないけれども。好きな人に積極的な行動ができない私がいけないんだってことも分かっているのだけれども。
そう、好きな人はいるのだ。
隣のクラスで、サッカー部のエースの冬月 雪弥(ふゆつき ゆきや)くん。
優しくてかっこよくて、素敵な人だ。同じ図書委員として、週一回当番の日に顔を合わせるのだけれど、それ以外は特に接点はなし。
けれどその当番を重ねていくうちに、私は彼に惹かれていった。
重い本を運んでくれたり、高いところの本を取ってくれたり、私がまごついているとすぐに来てくれて、とにかく気遣いが素晴らしい素敵すぎる人なのだ。
そんな優しい彼に、私もなにか役立てることがあればいいのだけれど、今のところこれと言って役に立っている気はしない。冬月くんが楽になるよう、なるべく図書当番の日は早めに行って、本の返却手続きを済ませたりはするけれど、そんなことくらいじゃ、彼の仕事の手際の良さにはまだまだ敵わないのである。
そんな私の想い人、冬月くんは、どうやら彼女がいるらしいのだ。
それはそうだよね、あんなに素敵な人なんだもの。彼女くらいいるよ。
冬月くんのことだ、きっと彼女をものすごく大事にしていることだろう。
そんなところもやっぱり好きだなぁ、なんて叶うことのない片想いをやめられないでいる。
いや、これはもう失恋している、とも言うのだろうか…。
なんにせよ、本人に迷惑は掛けていないし、こっそりと想うくらいいいよね…?
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