頬を染めるのは、イルミネーションのせいだけではないのです

 え!!冬月くんに彼女がいない!?でも、噂では彼女がいると…。ショッピングモールで可愛い女の子と腕を絡めてデートしているところを目撃した人がいるって、聞いたことがあったのだけれど。噂は結局噂だったのだろうか…?


「そんな…冬月くんに彼女がいないなんて…」


 こんなに素敵な人だと言うのに、どういったことでしょうか。え、と言うことは、私の片想いは、まだ失恋していない?

 衝撃を受けすぎて思わず漏れてしまった私の言葉に、冬月くんはまた少し困ったように笑う。


「それどういう感想?」

「あ、す、すみません!不快な気持ちにさせるつもりは全くなく!ただ、冬月くん、とっても優しくて素敵な人なので、さぞおモテになるだろうと思っており、彼女がいないのが意外だったというか…!」


 私の必死な弁解に、驚いたような、照れたような表情を見せる冬月くん。


「あー、えっと、ありがとう?」


 自分の言ったことに今更恥ずかしくなった私は、慌てて顔を俯かせる。


「ど、どういたしまして…?」


 何を口走ってしまったのか私は!冬月くんに好きな気持ちがバレてしまっただろうか。恥ずかしすぎる…こんなコンビニでなんて…。

 穴があったら入りたい気持ちになっていると、不意に冬月くんが口を開く。


「白雪さんは、…彼氏いるの?」

「え?いませんけど…?」

「そうなんだ。じゃあ、クリスマス、一緒に遊ぶ?」

「え?」


 クリスマス、一緒に遊ぶ?クリスマス、一緒に遊ぶ?クリスマス、一緒に遊ぶ?

 何を言われたのか、すぐには脳が理解してくれなかった。

 え?クリスマス、一緒に遊ぶ?私と冬月くんが?一緒に、遊ぶ??

 たっぷり一分くらいはフリーズしていた気がする。私は大きく息を吸い込む。


「遊びます!!」


 私の返事に、ぷっと噴き出す冬月くん。


「断られるかと思った」

「まさか!そんな恐れ多い!!」

「恐れ多いって。なんか、白雪さんのへりくだり方かわいいよな」

「へ?かわ?」


 私の思考が鈍っている間に、冬月くんはコートのポケットからスマートフォンを取り出すと、私の前に差し出した。


「ID教えてもらってもいい?」

「え?はい…?」


 図書当番で一緒と言うだけで、メッセージアプリのIDはもちろん交換したことがなかった。

 あれよあれよという間に、冬月くんとIDの交換が済んでいた。


「じゃ、また連絡する」


 そう言って、冬月くんはコンビニを出て行った。

「え、」

 しばらくコンビニの雑誌コーナーに立ち尽くしていた私は、はっと我に返る。

 私、クリスマスに冬月くんと遊ぶ約束をしたの…?夢?妄想?

 しかし手に握られたスマートフォンの画面には、メッセージアプリが開かれており、新しい友達欄に、冬月 雪弥と、表示されていた。

 夢じゃない…!

 
 毎年恒例、一人きりのクリスマス。

 しかし今年のクリスマスは、突如として好きな人と過ごすことになってしまった…?
 

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