義理の妹に計画的にハメられたけれど、大好きな幼馴染だけは渡しません!
「手を出していなくても、あんな状況でなんことを言うなんて、突き落としたのと同じだろ!!」
今まで見たことのない健太の剣幕に絵美でさえ驚いている。

花子は泣きそうな顔でうつむいて下唇を噛み締めた。
「絵美は俺にとって大切な人だ。なんでこんなことした!」

健太の両腕に更に強く力がこもり、絵美の心臓がドクドクと高鳴る。
大切な人ってどういう意味?

そう質問したいけれど、今はできそうにない。
「だ、だって……。絵美お姉ちゃんはなんでも持ってるじゃん! お友達も、幼馴染も、死んだお父さんからのプレゼントだって!」

絵美は手の中の万年筆へ視線を落とした。
自分が階段から落ちそうになっても、これだけは握りしめたままだった。

「でも私はなにも持ってない。引っ越しばかりで友達もできないし、お母さんは突然失踪しちゃったし……」
離しながら花子の顔がグチャグチャに歪む。
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