リヴィ・スノウはやわらかな嘘をつく
ずっと隠していたが実は長い間魔障に悩まされていたのだという。
「王都にいた頃、魔獣に受けた傷が治らないんだ。申し訳ないが頼む」
満月の晩ごとに想像を絶する痛みと、とある厄介な症状が襲ってくるのだと彼は打ち明けた。
逞しい腕を差し出し、なぜか少し赤面してその症状について告白するレインスの姿に、リヴィは生まれて初めて胸がきゅうっと熱くなった。
これまで何人もの男性の魔障や、傷の手当てをしてきたけれど、こんなふうに胸がドキドキとせつなく脈打つなどということはなかった。
魔障を治すのは治癒士の代々受け継ぐ独特の技だ。加えてさまざまな薬草の知識もある彼女たちを不気味がる人は多い。
魔物の多い土地に生き、人を癒す治癒士なのに、本当の意味で土地の人とは混じり合えないことを彼女たちは早いうちから悟る。
リヴィも、祖母が亡くなり、孤独を抱えながらこの地で生きてきた。だが、レインスは、彼だけは違った。