幼馴染二人の遠回りの恋
コンコン
ノック音とともに開いた扉から新志が顔を覗かせた
「棗、平気か?」
「あ、うん」
「今日は大した案件もないから帰って休んでも良いぞ?」
「・・・そ「じゃあ、そうしようかな、新志悪いな」
私が答えようとしたのを遮った風馬は
出勤して間もないのに帰ることを決めてしまった
「なんなら、抱っこで帰れよ」
ニヤニヤした新志に指摘されて
まだ風馬の膝の上で抱かれていたことに気がついた
「や、あの・・・これは、そのっ」
ジタバタして下りようとする私に対して
座ったままの状態で余裕の風馬は
「それもいいな」なんて笑っている
「もぉ、バカっ」
「慌ててる棗も可愛いな」
言葉にすると言った通りに
ストレートに言葉を使ってきた
「朝からお熱いことで。じゃあなんかあったら連絡するわ」
「あぁ、よろしく」
ヒラヒラと手を振って新志はフロアへと戻って行った
「・・・あ、の、ね?」
『好き』と聞いたばかりなのに
急に縮まった距離は私の心臓ばかりを酷使している気がする
あ、いや・・・違うか
風馬だってドキドキしているんだから
お互い様ってことなのかな
・・・調子が、狂う
明らかに分が悪い状況から抜け出すために咄嗟に浮かんだことが口を割ってでた
「風馬ってね」
「ん?」
「なんで目元を隠してるの?」
「・・・」
気付いた時にはジョンに似たスタイルだったから
なにかキッカケがあったのかどうか聞かなかった
問いかけに私を抱いている腕の力が弱まった。思ったよりも良い反応に頃合いを見て風馬の膝の上から下りようとした瞬間
ハァとため息を吐いた風馬は
「忘れてるのか」
少し苦しそうな声で呟いた
「・・・?」