幼馴染二人の遠回りの恋
side 風馬
『なつめ、ジョンがすきなの?』
『うん。だ〜いすき』
棗は家に来るたび、モジャモジャ頭のジョンを撫で回しては抱きついていた
そのたびにモヤモヤした胸の正体に気付いたのはしばらく後になってから
でも、その嫉妬は思わぬ好機も連れてきた
『風馬ってジョンみたいだよね』
何気ない棗の言葉の意味は、天パの俺の髪のことを指している
クルクルした髪をそっと撫でてくれた棗は
『フーマもかわいい』
そう言って俺に抱きついた
『・・・っっ!!』
◇◇◇
もうジョンは星になってしまったけれど
あの頃の俺はジョンの真似をすることで棗の気持ちも貰った気でいた
あれから二十年余り
棗は忘れてしまっているが
またこれをキッカケにすれば良いと
気持ちを持ち直すのは早かった
「俺の天パ」
「風馬の天パ?」
「ジョンみたいだって、撫でて抱きしめてくれた」
「・・・私?」
「そう」
「・・・っ!」
驚きに目を開いた棗は可愛くて
気がつけばオデコに唇をつけていた
「・・・ちょ、風馬」
「ん?」
「あ、の・・・ね、近い、よ?」
頬を染めて視線を彷徨わせる棗は本当に可愛い
だから、ここは譲れない
「近いのは昔からだよ?それに
棗に意識して欲しいから、もっと近づきたい」
「・・・っ!」
「棗のために前髪をわざと伸ばしていたけど
覚えていないなら、切ってみようか?」
更に意地悪を言ってしまうのはこの際許して欲しい
「・・・ぇ・・・と、なんか、ごめんね?」
「ううん、大丈夫。でも一度切ってみるよ
それでやっぱりこれが良ければ、また伸ばせばいい」
「・・・・・・うん」
消えそうな声だったけれど
棗が頷いたのを見て
「さぁ、帰ろうか」
棗を抱いたまま立ち上がった
「・・・っ、あ、の、風馬?」
これは慌てる棗を見たかっただけ
そっと足から下ろしてあげれば
頭ひとつ小さい棗は俺を見上げて
「ありがとう」と微笑んだ
やっぱり下ろすんじゃなかった
後悔先に立たず
もう一度抱き寄せたい気持ちを押し込めて、そっと棗の頭を撫でる
一瞬驚いた顔をしたけれど
棗は直ぐにスッと目を細めて頬を緩ませた
あぁ、可愛い
そう思った時には可愛い頬に吸い寄せられていた
side out