幼馴染二人の遠回りの恋
ルームメイト
幼稚園をお受験すると大学までエスカレーター式に進む桐葉学園
そのエスカレーターに乗ること十数年
大学二回生の春、実家の隣に住む幼馴染が人材派遣会社を立ち上げると言い出した
その突然の嵐に巻き込まれたと気がついた時には
その人材派遣会社、株式会社ウインドの社長秘書になっていた
その幼馴染でウインド代表の飛田風馬《ひだふうま》は所謂“ダサ男”
ひと言で説明するならば、そう!
オールドイングリッシュシープドッグ
え?分からないって?
毛足の長い可愛い犬・・・ん
どうぞネットで検索してください・・・じゃなくて
パッと見、飛びついて撫でたくなるような愛らしい風態
目元まで覆ったモジャモジャ頭に人懐っこい性格
飛田家が飼っていたジョンにソックリ
そのジョンにダサ眼鏡をかけると風馬になるんだけど
その眼鏡すら長い前髪に隠されているから誰も風馬の目を見たことがない
てか、顔の半分が隠れてるってホラーよね
ゲーム好きを公言していることもあって
体育の授業以外で運動をしているところを見たことがないから
女の子も羨む色白さん・・・いや
ゲームヲタクというレッテルまで貼られているから特には羨まれてはいないのが正解
加えて、人見知り、コミュ障
だから、友達と呼べるのは風馬の従兄弟の飛田新志《ひだあらし》と私だけ
そんな小さなコミュニティで過ごしてきた風馬に
『人材派遣会社を立ち上げるとか無謀過ぎる!』
と、意見したことがキッカケで
巻き込まれてしまったのだった
ーーーーーあれから五年
「棗《なつめ》」
「ん?」
「朝ごはん食べる?」
「食べる〜」
「じゃあ着替えてきて」
「は〜い」
私の部屋に簡単に入って来る風馬
実はウインドの社員になった冬には訳あって、風馬が一人暮らししていたマンションに転がり込むような形で同居を始めた
それ以来“どちらかにパートナーができたら出て行く”という約束のもと暮らしてきたけれど
未だにどちらにも春はやって来ることなく現在に至っている
お互いの両親は私達が結ばれることを願っているみたいだけど
あまりにも長く一緒に居たから
もはや“家族”みたいにしか思えない
というのが正直なところ
だって・・・
此処に暮らしていれば風馬がなんでもやってくれるから居心地が良いし
一番は
高級マンションに破格で住めるって幸せ
というより
「棗っ!」
「今行く〜」
どうみても風馬が母親化しているのが原因だと思う