幼馴染二人の遠回りの恋
「・・・風馬君、なに?」
「だから、離れて?」
しがみつく彼女を振り解こうとする風馬と対照的に益々しがみつこうとする彼女の様子に、これ以上黙って見ていられなくなった
「離れなさいよっ」
思ったより大きめに出た声にすぐさま反応した金村茉莉乃は
「なんで棗ちゃんが言うのよっ」
風馬から見えないのを良いことに私の気持ちを逆撫でするような含み笑いでこちらを見た
その表情を見ただけで身体が動いた
「離れてよっ」
風馬から引き剥がすように間に割って入れば金村茉莉乃は態とらしくグラついた
「キャァァァァ」
「・・・っ」
大袈裟な振る舞いで踏ん張って見せた金村茉莉乃は、私を避けてまた風馬にしがみついた
「金村さん、離れて」
風馬も再度掴まれた腕を剥がそうとすれば
「えぇぇ、だって茉莉乃、今ので足首を捻ってしまったみたいなの
だから風馬君の支えがないと立っていられない」
一度私に挑発的な視線を向けてから風馬を見上げた
・・・絶対嘘だ
絶対嘘に決まっていると思うのに
彼女がバランスを崩したのは私の所為
結局、待ち伏せされた上に
風馬が送って行くという最悪の結末になった
「棗、ごめん。先に帰ってて」
そう言って私より泣きそうな目をした風馬は
「心配しなくて大丈夫だから」
わざとらしく腕を掴んだままの金村茉莉乃と一緒に背を向けた