幼馴染二人の遠回りの恋
━━━━━━七年前
桐葉大学の入学式
目立ちたがり屋で騒々しい金村茉莉乃の姿がなかった
それは瞬く間に学生達の間に広まり
唯一進路を知っていた子によってすぐさま真相が明かされた
『あの子は聖愛』
お嬢様学校と呼ばれる聖愛女学院
金村茉莉乃は確か・・・どこかの経営者一族の娘で
小さな頃からワガママに育てられたらしく
気に入らないことがあるたび
『茉莉乃、こんなことならS女に行けば良かったぁ』
そう言って頬を膨らませては
『でもねっ。茉莉乃、風馬君のことが好きだから離れたくないの』
風馬の話題で完結させるのが一連のお約束だった
聖愛に進学変更したとしても“こんなことなら”を嫌と言うほど聞かされたこちらとしては不思議では無いけれど
突然のフェイドアウトに肩透かしを食らった気分になったことは確かだった
見た目を抜きにしても優しい風馬は密かに人気で
幼稚園の頃に風馬を好きだと公言した金村茉莉乃は
ライバルが出現するたび裏でイジメていたらしい
らしいと言うのは後々聞かされた話で
ライバルを蹴落とすのに手段は選ばなかったそうだ
私はいつも風馬のそばにいたからイジメる隙が無かっただけ。なにかされた時には風馬に告げ口することで仕返しもしたから
金村茉莉乃はいつだって私を“腰巾着”呼ばわりしては見下していた
その頃の私は風馬を幼馴染として大事に思っていただけだから
金村茉莉乃はただただ迷惑な女という括りだった
でもまぁ、毎日のように繰り返される嫌味に辟易していたことは確かで
風馬の家と合同で開いた大学進学祝いのパーティの夜
ノンアル酎ハイで乾杯した時の爽快感はお酒が飲めるようになった今でも忘れられない
あれから・・・街で出会すこともなく
金村茉莉乃のことなどスッカリ忘れていたのに
雑誌を読んだに違いない
離れていた七年なんて無かったかのように現れた金村茉莉乃に
心が騒ついた
だって
風馬に触れられたくない思いしか
ないのだから