幼馴染二人の遠回りの恋
「・・・め、棗っ」
肩が揺られてハッとする
「あ・・・お、かえり、風馬」
「うん、ただいま。どうした棗
ぼんやりして。調子悪いのか?」
「・・・ううん、大丈夫だよ
それより金村茉莉乃は?」
ソファに座ったまま見上げた風馬は
その名前に僅かに動揺を見せた
「・・・送り届けたから、大丈夫」
なんだろう、少しだけ遅れた返事に凄く違和感を感じる
粘着質な彼女のことだから
これ幸いと風馬に接近したに違いない
“大丈夫”と言われても私の責任でもあるから引き下がれなかった
「棗、あのさ」
風馬は思い詰めたように眉を下げた
「どうしたの?やっぱり何かあったんでしょ」
「明日から金村を病院に送迎しなきゃいけなくなった」
「・・・え」
「足首を捻ったとは言ってるけど、歩けるから直ぐに治るとは思うんだ」
「あれは私の所為だから、私が送る」
「それでも。俺のことが発端だから俺が責任をとるよ」
「・・・風馬」
「棗は心配しないで。きっと直ぐに元通りになるから」
「風馬がそう言うなら」
「じゃあ、この話はこれで終了な」
「うん」
◇◇◇
短期的な通院だけの繋がりだと思っていたのに
金村茉莉乃はことあるごとに風馬を呼びつけているようで
風馬のスマホが短く鳴るたび泣きそうになる
でもそれを表情に出せば風馬に負担がかかる
あと少し、あと少しと我慢して
背中を見送り続けた私の前に金村茉莉乃が現れた