幼馴染二人の遠回りの恋



「お待たせ」


「ん」


「「いただきます」」


「美味し〜」


「そーだろ」


「うん」


ちょっとリッチなホテル食パンをトーストしてバターを塗るのが風馬と私の朝の定番

ズボラな私はそれにコーヒーさえあれば生きていけるのに

優しい風馬はサラダにベーコン付きの目玉焼きまで作ってくれる


「いつもありがとう」


「どういたしまして」


目を見てお礼を言ったつもりだけど
風馬と視線が絡むなんてないから
いつもなんとなく眼鏡の辺りを見るだけ

伊達眼鏡だとばかり思ってきたけれど


前髪の所為で実は視力が悪いのだろうか?
気にはなるものの一歩踏み込むことに躊躇う私もいて
ルームシェアって実は難しいんじゃないかって思ったりもする


「棗、今日の予定は?」


「ん、と。楓とデパートで買い物して
その後、椛《もみじ》の病院にお見舞いに行く」


「椛、大丈夫?」


「ん、なんとも言えないけど
家に居ると動いちゃうから強制入院って言ってたよ」


「そっか、妊婦も色々大変なんだな」


「みたいね」


「他人事だな」


「だって。経験ないし」


「まぁいいさ、晩御飯は?」


「楓は病院までお迎えがくるから
私は一人で帰ってくるよ」


「んじゃ、用意しとくな」


「ありがと〜」


「ん」


今日は月に一、二度舞い降りる
奇跡的に仕事の予定がゼロの日

会社へ行けば何かしらすることはあるんだけど、風馬はそれを良しとせず


鶴のひと声が発動され平日に休める“ご褒美的休日”になるのだ


「家まで送ろうか?」


「ん?大丈夫、風馬は休んでて
たまにはバスにも乗りたいから」


「気にしなくて良いのに」


「気持ちだけ貰っとく」


「ん」


どこまでも優しい風馬にも一人の時間を与えるために

休みの日は、特に予定がなくても出掛けることにしている

専らウインドウショッピングになってしまうけれど
それが唯一時間の潰せること


会社でも常に一緒にいるから気を遣っているのに

風馬はそれも詰めようとしてくるから


やっぱり彼女ができないのは私の所為かな、なんて思ってしまった




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