幼馴染二人の遠回りの恋
「あの女。性懲りも無く」
盗撮紛いの写真を椛に渡すと一瞬で般若のような顔つきになる
「風馬と付き合うから出ていけって」
「風馬はなんて?」
「金村茉莉乃に会って、そのまま此処に来たの」
「それは、風馬のことを意識し始めたってこと?」
「・・・え」
「だって、風馬に聞くのが怖いんでしょう?」
指摘されて初めて、真っ直ぐ帰りたくなかった自分の行動が腑に落ちた
「お互いどちらかに相手ができたらルームシェアの解消って決めてたんだから
この場合“おめでとう”って出て行くのが答えなのに」
「・・・」
「嫌なんでしょう?」
「・・・・・・うん」
「嫌なこと言ってみて」
・・・嫌なこと
そう言われて直ぐに浮かんだのは
「金村茉莉乃の呼び出しに風馬が出かけること」
「じゃあ、許せないことは?」
・・・許せないのは
「金村茉莉乃と風馬が付き合うこと」
「じゃあ、何より嫌なのは?」
それは・・・
「・・・風馬のそばを離れること」
「ほら、答えが出たじゃん」
「・・・うん」
「やっとじゃん」
「・・・だって、考えたこともなかったの」
「風馬だって嫌いな相手を秘書にしたり、ルームシェアを提案したりしないよ?」
「好きって言われた」
「え、いつ?」
「晴雄が会社に乗り込んできた日」
「早く言ってよ〜」
「ごめん」
「まぁ、子供の頃から風馬がなっちゃんのことを好きなのは知ってる」
「・・・え」
「知らないのは鈍感な、なっちゃんだけよ」
「そうだったんだ」
「で?両想いなのに何で逃げたりするの」
「最近の風馬は病院の送迎だけじゃなくて
呼び出されたら何時でも出て行くの」
「・・・え」
「だから、好きって言われたけど
無かったことみたいに思えるの」
一緒に居るのに誰よりも風馬を遠くに感じていた