幼馴染二人の遠回りの恋



マンションまで十分の距離を泣き腫らした顔を戻すために歩く


更には途中のスーパーで買い物をして時間を稼いで戻った私を待っていたのは


泣き出しそうな顔をした風馬だった


「棗っ」


玄関でギュッと抱きしめられた


「ただいま?」


どうしたの?と続けるつもりの口は身体を離した風馬の瞳が揺れていることに止まった


「心配した」


「ごめん」


「いや、全部俺が悪いから」


“なにが”風馬を不安にさせているのか聞くよりも先ずは安心させてあげたい


「私はいつでも風馬の味方」


あの頃の記憶を辿る


風馬にもそれが伝わったのかぎこちないながらも笑ってくれた


「ねぇ、もう重いんだけど」


「ん?」


買い物袋を少し持ち上げてみせると
途端に破顔した風馬は私の手からサッと取り上げると中を覗いた


「唐揚げだ」


嬉しそうな風馬に手を引かれてリビングダイニングに入ると途端にホッとする空間に頬が緩む


金村茉莉乃に“出て行って”と言われたけれど

住んで五年の居心地の良い“我が家”はこんなにも私好みのインテリアで溢れている




「「ごちそうさまでした」」


風馬と並んで作ったのは昆布出汁が味の決め手の唐揚げにポテトサラダと野菜たっぷりの味噌汁


特に説明をしなくてもお互いに手順よく進めるお陰で料理も楽しい


帰って早々抱きしめられたこともあって風馬の気持ちは波立っているはずだけど
敢えて普段通りに進めたのは私も不安だったからだ


「今夜は飲もう」


「うん」


順番にお風呂を済ませてお互いパジャマ姿でリビングルームに戻る


照明をおとしてカーテンを開けると街の灯りが綺麗に揺れているのが見えた











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