幼馴染二人の遠回りの恋
「今日ね、金村茉莉乃に会った」
風馬の顔を見ずに打ち明けたのは私の弱さ
「っ・・・金村、なんて」
「風馬と付き合うことになったから私に此処を出て行って欲しいって」
「・・・っ」
「風馬に聞くまでは返事もできないから、そのまま帰って来ちゃった」
「・・・そうか」
「風馬、金村茉莉乃と付き合うの?」
口にしただけで胸が苦しくて景色から視線を離して風馬を見上げた
「無い。それは絶対無い」
強い意志の籠った瞳で強く否定してくれたことに
無意識のうちに食いしばっていた奥歯から力が抜ける
「それじゃあ金村茉莉乃はどうしてあんなに自信たっぷりなんだろう」
「それは・・・」
途端に彷徨う風馬の瞳から視線を逸らさずいれば
覚悟を決めたように口を開いた
「実は・・・」
まさか椛と話した高三の一時期の謎が出てくるとは思わなくて
聞かされる真実に怒りが込み上げた
「あの時、棗が金村の靴箱に触れている写真を見せられたんだ」
「金村茉莉乃の靴箱になんか触れたことないよ?」
「でも、触れているように見えたんだ」
敵の多かった金村茉莉乃の靴箱はいつも何かしら入っていて
少しでも疑われないようにと彼女を除くクラス全員で気をつけていたから断じてあり得ない
金村茉莉乃の斜め上だった私の靴箱
もしかして、そこに手を伸ばす途中を切り取られていたとしたら・・・
「それで、どうしたの?」
「その時に入っていた手紙も見せられた」
「手紙?」
「その手紙に使われていたルーズリーフが、いつも棗が使っているやつで
字も棗の字だと疑わなかった」
そこまで聞いて風馬が罠に掛けられたんだと確信した
私を頼りにしている風馬が私の使っているルーズリーフを間違える訳ない
だって、私のルーズリーフは一枚一枚右下にジョンの似顔絵を描いていたから
「死ね、消えろって書いてあった」
「風馬、庇ってくれようとしたの?」
「先生に言って棗を退学処分にしてやるって言うから
金村に従うしかないと思ったんだ」
「・・・っ」