幼馴染二人の遠回りの恋
「今思えば棗自身が犯人ですって言わんばかりのミスを犯すとも思えないのに
あの時は後少しで卒業なのにって焦りから正常な判断ができなかったんだ」
でもそれなら金村茉莉乃が聖愛へ進学したのは腑に落ちない
「金村の登下校に付き添いながら
何か打開策がないか探ってる時に救世主が現れた」
「救世主?」
「守衛の安森さん」
「安森さんが救世主?」
ゲームが大好きな風馬の情報を何処で仕入れたのか、桐葉学園に常駐する守衛の中で一番若い安森さんは
コミュ障の風馬を懐柔した珍しいタイプの人で
ゲームを通じて今でも交流がある
「金村が放課後の教室で棗のルーズリーフを抜き取る所を見ていた」
「ホント?」
「ホント。その時に注意もしたらしくて、そこを突くと
金村は自作自演だったとアッサリ認めたよ」
「・・・良かった」
安堵と共に湧き上がるのは金村茉莉乃に対しての怒り
「結局。進路を変更するから黙っていて欲しいって頼みこまれた」
「そうだったんだ」
「うん。俺も面倒事が消えるならって、それを受け入れた」
「でも、そんな金村茉莉乃がまた近づくなんて」
「非常識にも程があるよな」
「どの面下げてって感じ」
「けど、金村ならやりそうだろ」
「・・・確かに
でも、その金村茉莉乃と今回がなんで繋がるの?」
「その時の自作自演を無いことにして
高校の時に自分を虐めた棗に突き飛ばされて怪我をしたから
ウインドとの取引を止めてやるって
社長と並んで詰められた」
「そんな」
「あの社長なら娘のお願いも聞きそうだろ?だからそれに乗ったフリをしてた」
「乗ったフリ?」
「証拠を押さえて突きつけるまでは相手を探る必要があるだろ?
棗が悪者にならないように慎重に考えて行動してたんだ」
「風馬」
「そしたら棗の俺を見る目が変わってきて・・・
もしかしたら棗に誤解されてるかもって」
「じゃあ今まで出掛けてたのは?」
「病院以外はGラインが切れても良いように他の営業かけてた」
知りたいのに不安だった答えに心の底から安堵した