幼馴染二人の遠回りの恋
「言ってよ」
「言えば棗が罪悪感が湧くだろ」
「ごめん」
「謝るなよ。俺が棗のために動きたくてやったこと」
そう言って頭を掻いた風馬は私の頭を撫でた
「・・・っ」
トク、トクと強く打つ鼓動
いつもと違って胸が騒つく
そうだった
私、風馬のことが好きって気付いたばかり
話に集中していたから意識も薄れていたけれど
風馬の手を意識した途端、その熱が伝わるみたいに私の頬も熱くなった
その頬に手を伸ばしてきた風馬は
「棗」
いつもより甘く名前を呼んだ
「ん?」
「ずっとずっと棗に守られてきたから
今度は俺がお返しをする番だ」
蕩けるような優しい瞳で微笑む風馬に抱き寄せられ、抗うことなく素直に胸に収まった
「さて、ずっとこうしていたいけど
作戦会議をしますか」
名残惜しそうに離れた風馬は悪戯っ子みたいに歯を見せて笑った
「作戦会議?」
「金村親子に引導を渡す」
「引導?」
「あぁ、もうGラインを切ると決めた」
決意の込められた風馬の声に“大丈夫?”なんて愚問だと思った
これまでもそうだったように、風馬を信じてついて行くだけ
「了解。それなら加えるものがある」
「ん?」
テーブルの上に置いたままのバッグから写真の入った封筒を取り出して風馬に渡した
「なに?」
「良いから見て」
金村茉莉乃にコレを渡された時は身体が震えて仕方なかった
でも今は椛の前で泣いたのが嘘みたいに気分は晴れている
封筒から中身を取り出した風馬は驚愕の表情で私を見た