幼馴染二人の遠回りの恋



右手の温かさに意識が浮上する
ゆっくりと持ち上がった目蓋の先に眠っている風馬が見えた


・・・あのまま寝ちゃったんだ


無防備な寝顔が幼稚園の頃のあどけない風馬と重なって見えて


「フフ」なんだか懐かしさが込み上げた


漏れた笑いに気づいたのか風馬の目蓋も持ち上がった


「ん?」


眠そうな顔は、私もか


「ううん。てか、風馬のベッドだ」


風馬のベッドで寝るのは大泣きした日以来


「・・・あぁ。手を繋いでたから」


少しハニカムように笑う風馬は繋いだままの手に少し力を込めた


「寝相大丈夫だったかな」


「俺も爆睡してて分からない」


「フフ」


「朝ごはん食べられそう?」


「うん」


「じゃあ棗はもう少し寝てて良いよ」


頭を撫でてくれた風馬は自分だけ起きあがろうとした


「私も」


離されそうになった手を繋ぎ直して起き上がると、眠そうな目が優しく私を映した


「ん?」


「一緒に作ろう?」


珍しく早く起きたのだから私も手伝いたい


そんな思いも込めて左手で拳を握って見せる


それにクスと笑った風馬は「あぁ」と繋いだ手を引いた




◇◇◇



彼氏ができるのは晴雄以来
しかも生まれる前からお隣さんの幼馴染だなんて


今更だけどむず痒い


風馬は私が初めての彼女だから
なんだか動きがぎこちなくて可愛い


勢いで自分からキスしちゃったけど
大胆過ぎて風馬に引かれてないか不安


「棗、卵取って」


「あ、うん」


冷蔵庫を覗いたままボンヤリする私に、風馬は首を傾げた


「どうかした?」


「ううん」


ワンプレートに仕上げるためのお皿を用意しながら
ドキドキして緩みそうになる頬を堪える

いつもと変わらない朝に
彼氏になった風馬と朝ごはんを作る


・・・楽しい


風馬も同じ気持ちなら、もっと嬉しい



< 43 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop