幼馴染二人の遠回りの恋
右手の温かさに意識が浮上する
ゆっくりと持ち上がった目蓋の先に眠っている風馬が見えた
・・・あのまま寝ちゃったんだ
無防備な寝顔が幼稚園の頃のあどけない風馬と重なって見えて
「フフ」なんだか懐かしさが込み上げた
漏れた笑いに気づいたのか風馬の目蓋も持ち上がった
「ん?」
眠そうな顔は、私もか
「ううん。てか、風馬のベッドだ」
風馬のベッドで寝るのは大泣きした日以来
「・・・あぁ。手を繋いでたから」
少しハニカムように笑う風馬は繋いだままの手に少し力を込めた
「寝相大丈夫だったかな」
「俺も爆睡してて分からない」
「フフ」
「朝ごはん食べられそう?」
「うん」
「じゃあ棗はもう少し寝てて良いよ」
頭を撫でてくれた風馬は自分だけ起きあがろうとした
「私も」
離されそうになった手を繋ぎ直して起き上がると、眠そうな目が優しく私を映した
「ん?」
「一緒に作ろう?」
珍しく早く起きたのだから私も手伝いたい
そんな思いも込めて左手で拳を握って見せる
それにクスと笑った風馬は「あぁ」と繋いだ手を引いた
◇◇◇
彼氏ができるのは晴雄以来
しかも生まれる前からお隣さんの幼馴染だなんて
今更だけどむず痒い
風馬は私が初めての彼女だから
なんだか動きがぎこちなくて可愛い
勢いで自分からキスしちゃったけど
大胆過ぎて風馬に引かれてないか不安
「棗、卵取って」
「あ、うん」
冷蔵庫を覗いたままボンヤリする私に、風馬は首を傾げた
「どうかした?」
「ううん」
ワンプレートに仕上げるためのお皿を用意しながら
ドキドキして緩みそうになる頬を堪える
いつもと変わらない朝に
彼氏になった風馬と朝ごはんを作る
・・・楽しい
風馬も同じ気持ちなら、もっと嬉しい