幼馴染二人の遠回りの恋
到着したのはお気に入りのブランドショップ
私の持っている大人服と同じデザインが買えることで
お洒落に敏感な女の子の御用達らしい
「ママがかったのどれ?」
「ん〜と」
ショップに足を踏み入れて早々
見つけたそれを指差した
「これ」
「えーーーっ、ちょーかわいい」
ディスプレイに飾られている
肩口のリボンが特徴的なサマーニットとミニのフレアスカートに早速楓は食いついた
「いらっしゃいませ、楓ちゃん」
よく来るお陰で名前を覚えて貰った楓は一瞬で破顔した
店長の冨永さんにマネキンの着る服を取ってとオネダリする様子をカメラでパシャリ、店内の小さなベンチに腰掛けた
「あのね、ママとお揃いなの」
視線を一瞬こちらに向けた冨永さんにそのままでと頷いてみせる
「あ〜と、えっと、ママね」
「うん」
笑うと笑窪のできる冨永さんは、妹のことも知っているのに、そのまま合わせてくれる良い人だ
「棗さんもコレ買われたんですか?」
「昨日」
「子供服は今朝ディスプレイに出したところなんですよ」
「フフ」
流行りの服ではあるけれど
母娘コーデの出来るものは週末に売り切れることが多い
勿論それを狙って平日のうちに買うことにしている
お昼休憩にゲットできるのはウインドがデパート向かいの複合型商業ビル、レガーメにあるから
このミラクルはレガーメの抽選に打ち勝った風馬のお陰
「ママ、かみのリボンは?」
「それはもう買ってる〜」
「やったぁ」
母娘コーデというよりは双子コーデに近い私と楓のお揃い服は
髪留め、バッグ、靴もお揃いと抜かりが無い
今年二十六歳になるのに、未だに結婚の気配も無く、そもそもの恋愛すら予定もない現状は
可愛い姪っ子に“ママ”と呼ばれる幸せにドップリ浸っているのも要因になっているのかもしれない