幼馴染二人の遠回りの恋


院長はサッと先に座ると奥さんに手を伸ばして抱きしめるみたいに隣に座らせた

それが自然に見えるのは、この二人の雰囲気もあるだろう


二人を見つめ過ぎていたのか、私の視線に気づいた奥さんは


「過保護でしょう?」


院長の肩に頭を預けながらフフと笑った


「あの、えっと。。いつも仲が良くて。なんというか・・・羨ましい限りです」


私の答えが意外だったのか


「お二人も仲良さそうに見えるよ?ねぇ?」


同意を求めるように見上げた奥さんに

うんうんと頷いた院長も

なんだろう・・・凄く甘い


「確かに仲は良いんですけど。それはお腹にいた頃からの幼馴染なので」


その甘さに、これまでより踏み込んで話していた


「幼馴染から進展して付き合うって凄いね」


「付き合い始めたのが昨日で」


「え、そうなの?でも・・・」


首を傾げる仕草も可愛い


「それまではルームシェアだったんです」


「へぇ、そうなんだ」


「二十数年、ずっと俺の片想いでした」


いきなり私と奥さんとのお喋りに割り込んできた風馬はそう言って頭を掻いた


「素敵〜。長年の片想いが実るとか
それも昨日とか。キュンとする」


両手で頬を挟んだ奥さんを院長が抱き寄せる

お砂糖みたいに甘く微笑む院長を見ているだけで
干支一回り下の奥さんが可愛くて仕方ない気持ちが伝わってきた


「私はご夫婦なのにいつも甘いお二人を見ているだけでキュンとしますよ」


「え〜ほんと?嬉しい」


私が見ても可愛いと思うのだから、院長は心配だろう


お喋りしている間に風馬は動画を院長に見せて確認を取ったようで、話は終わっていた


「良かったら次は食事でも」


「はい、是非に」


誘ってくれた院長に食い気味で返事をして、レガーメに行くという二人を見送った






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