幼馴染二人の遠回りの恋
Gラインから引き上げた派遣社員との面談では沢山の問題が明るみになった
これまでの経緯を説明し、風馬が頭を下げた。加えて今後の対策についても話したことで離れかけていた派遣社員さん達も登録解除までは踏み止まってくれた
満了まで待たず契約解除になった対応として、全員が新たに開拓していた他社に引き継がれることになった
初回面談に付き添う日々はまさに怒涛と呼べる目まぐるしさ
それでも、気持ちは前向きで毎日は充実していた
金村親子はというと
Gラインはシフトが回せない程の人員不足に他の企業にも泣きついたけれど
元々の評判の悪さと過去の実績からどの企業も門前払いになったという
そのため親族総出で売り場に出たようだが生来の暴慢さは家系なのか三日ともたず[臨時休業]の札が下がる小売店が続出
SNS上では元社員とみられる書き込みが相次ぎ、街はこの話題で持ちきり
遂には閉店する店も出てきた
噂では経営陣を一掃しチェーン展開する大手企業の傘下に収められることになったらしい
金村茉莉乃は・・・
被害届が受理された時点では弁護士を立てて争う姿勢でいたけれど
経営難から父親に援助を断られた上
マンション側からも追い詰められたことで
漸く現実と向き合っているらしい
それにしても・・・
マンションに潜り込んだ時の様子を大野さんから“オフレコで”と教えてもらった
その内容に風馬と二人で絶句
侵入したのは金村茉莉乃とセフレらしい
その方法は・・・
先ず、エントランスに置かれている観葉植物や花のリースを請け負う会社にセフレを潜り込ませ、折を見てカメラを仕込んだ植物を搬入させた
エレベーターを映した映像からアッパーフロアの住人を割り出し言葉巧みに近づいて家に押しかけたそうだ
その家からの帰りにうちの階にカメラを仕掛けた
執着という言葉では足りない恐怖に風馬はストーカー相談もした
マンション管理会社からはセキュリティをより強化すると確約を貰い、居住フロアへは認証キー、別のフロアへの移動はフロントを介することになった
更には住民からの要望を取り入れる形で施工されるセキュリティも加わり更に進化するらしい
そんな怒涛の日々が落ち着いて、やっと実家に帰る日
車に乗るのを一瞬躊躇った私を風馬は見逃さなかった
「棗」
「ん?」
「心配しなくても、この車には棗と家族以外乗せてないから」
「・・・本当?」
「うん。本当」
安心させるように抱きしめてくれた風馬に沢山お礼を言った