幼馴染二人の遠回りの恋



「「乾杯」」


風馬と二人でカウンターに座ってグラスを合わせた


「凄いなこれ」


「盆と正月が一緒に来たらしいよ」


「なんだそれ」


風馬と顔を見合わせて苦笑い


視線の先には泣いているのか笑っているのか分からないほどテンションの上がった両親達

案外巻き込まれながらも楽しそうな椛の旦那さんと、隣で上手く溶け込んでいる楓


風馬と私の付き合いを喜んでくれていることは分かるものの


時間が経てば経つほど盛り上がり、勢い付いた四人は合唱のように歌まで歌い始めたから手がつけられない


そこから避難してカウンターに座ったまでは良かったけれど


主役にされてしまった私達に酔っ払い達のウザ絡みはエンドレス


兎にも角にも、楽しそうな両親達を見ているだけで

釣られて沢山声をあげて笑ったから溜まっていたストレスは開放できた
実は苦笑いなんてしている場合じゃないのかも



「風馬、良かったね」


「あぁ。棗のおかげ」


「それは諦めずに待っていてくれた風馬のおかげでもあるよ」


「俺の粘り勝ちだな」


「フフ、うん」


「棗、ちょっと抜けよう」


「ん?」


「良いから、ほら」


私の手からグラスを取った風馬はそのまま手を繋いだ


「ヒュー、お二人さん!」
「新婚旅行ですかっ」
「楓ちゃん。従兄弟ができるわよ〜」
「俺たちもやっと孫が抱けるのか」
「ママ、がんばって〜」
「お義姉さんいってらっしゃい」


途端に湧き上がるガヤに見送られて手を振った


「どこ行くの?」


お酒は飲んでいなかったから大丈夫だけど・・・

車の鍵まで持った風馬に促されるまま助手席に乗り込んだ


「学校」


「学校?」


「あぁ」


もう夜だから桐葉学園は施錠されているはず

そこにわざわざ行くと言うのだから何かあるのだろうか


手を繋いだまま動き始めた車は、あっという間に懐かしの学園前に着いた









< 55 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop