知人の紹介で
プロローグ
『新郎・志信様と新婦・衣月様の出会いは十年前。共通の友人からの紹介でお二人は知り合いました――』
披露宴会場には新郎新婦の親族の他、それぞれの職場の人間や友人と思しきメンバーが決められたテーブルに着いている。そんなテーブルのうちの一つ、そこには同年代の四人の男女が座っており、彼らは皆、新婦の大学時代の友人であった。
大学のゼミのグループワークをきっかけに知り合った彼らは、それぞれ皆違った性格をしており、一見相容れぬ仲にも思えるが、不思議とその違いが心地よく、出会いから十年が経った今でも、こうして互いの結婚式に出席する程度には交流を続けている。
ゲスト席に着いている四人は全員既婚者で、今回の衣月の結婚がメンバーの中では最後となった。といっても三十歳目前での結婚と衣月の結婚も決して遅くはない。一般的に見て、五人全員が二十代のうちに結婚したというのはかなり早いほうだろう。
「なあ、俺らさ、全員知人の紹介で知り合ったことになってるよな。実際違うのに」
メンバー内では一番明るい性格の圭吾が、新郎新婦の馴れ初めエピソードに耳を傾けながらも、そんなことを小声でこぼした。圭吾はおかしそうにその顔に笑みを浮かべている。だが、それを聞いた他のメンバーは皆複雑な表情を浮かべていた。
「しかたないでしょ。本当のことなんて言えないんだから。圭吾だって誤魔化したくせに」
千景が圭吾に軽く睨みを利かせながらたしなめた。あまり積極的に触れたい話題ではないのだ。
「それはそうだけど……でも、俺は恥じることは何もしてないから。ちょっと事情が複雑なだけで」
「でも、奥さんがご両親に正直に話そうとして焦ったんでしょ?」
「まあな……本当にあのときは冷や汗かいた。あの人見かけによらず男前だから……」
圭吾はそのときのことを思い出してその顔に何とも言えない複雑な笑みを浮かべた。
披露宴会場には新郎新婦の親族の他、それぞれの職場の人間や友人と思しきメンバーが決められたテーブルに着いている。そんなテーブルのうちの一つ、そこには同年代の四人の男女が座っており、彼らは皆、新婦の大学時代の友人であった。
大学のゼミのグループワークをきっかけに知り合った彼らは、それぞれ皆違った性格をしており、一見相容れぬ仲にも思えるが、不思議とその違いが心地よく、出会いから十年が経った今でも、こうして互いの結婚式に出席する程度には交流を続けている。
ゲスト席に着いている四人は全員既婚者で、今回の衣月の結婚がメンバーの中では最後となった。といっても三十歳目前での結婚と衣月の結婚も決して遅くはない。一般的に見て、五人全員が二十代のうちに結婚したというのはかなり早いほうだろう。
「なあ、俺らさ、全員知人の紹介で知り合ったことになってるよな。実際違うのに」
メンバー内では一番明るい性格の圭吾が、新郎新婦の馴れ初めエピソードに耳を傾けながらも、そんなことを小声でこぼした。圭吾はおかしそうにその顔に笑みを浮かべている。だが、それを聞いた他のメンバーは皆複雑な表情を浮かべていた。
「しかたないでしょ。本当のことなんて言えないんだから。圭吾だって誤魔化したくせに」
千景が圭吾に軽く睨みを利かせながらたしなめた。あまり積極的に触れたい話題ではないのだ。
「それはそうだけど……でも、俺は恥じることは何もしてないから。ちょっと事情が複雑なだけで」
「でも、奥さんがご両親に正直に話そうとして焦ったんでしょ?」
「まあな……本当にあのときは冷や汗かいた。あの人見かけによらず男前だから……」
圭吾はそのときのことを思い出してその顔に何とも言えない複雑な笑みを浮かべた。
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