知人の紹介で
　その場所を訪れたのは今日が初めてだった。懐かしい友人から連絡があり、久しぶりに会って話そうと言われてその駅に降り立ったのだ。

　土地勘がないから、スマホの地図アプリで場所を確認しつつ、周囲にもきょろきょろと目を向けながら、優作は一人歩いていた。

　駅からは少しだけ離れたところにある飲食店が目的地。アプリが示してくれている経路に従いながら歩いていくと、大通りの裏にある細い道に出た。目的地まではあと五分くらい。しばらくは真っ直ぐ歩けばいいようだから、一度スマホをポケットにしまい、前方を見ながら歩いていく。

　大通りの裏の道だからかあまり人は歩いていない。なんとなく周囲の建物を眺めながら歩を進めていれば、なんだか違和感のある女性が一人立っていた。

　ちらと目を向けただけだからはっきりとはわからないが、高校生か大学生くらいだろうか。大人しめの印象の女の子が一人で突っ立ってきょろきょろとしている。もしかしたら道にでも迷ったのかもしれない。優作はそう思いはしたものの、土地勘のない自分では役に立たないだろうしとすぐに目を離した。


　けれど、優作がその女の子の前を通り過ぎようとしたその瞬間、「あの」と声をかけられた。ああ、やはり道を尋ねたいのだろうなと思い、自分ではわからないだろうが一応礼儀として話だけは聞こうとその子に向き合えば、その子が次に発した言葉は優作を誘うとんでもないものだったのだ。
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