知人の紹介で
「実は陽菜からあなたのことを好いているという話は早い段階から聞いておりまして、あなたにご迷惑をおかけしてはいけないと言い聞かせていたんです」
「え?」
「ですが、陽菜の想いは固いようで、どうしてもその想いを伝えたいというので、無理に押しつけてはいけないと言いつつ、背中を押しました。すみません」
「え、いえ」

 優作はその謝罪に慌ててそれは必要ないと否定したが、頭の中では陽菜の父の言葉に軽くパニックに陥っていた。まさか陽菜の親が陽菜の告白を後押ししていただなんて夢にも思わなかった。

「あなたがとても優しい良い人だということは最初からわかっていましたから、あなたがいいと仰ってくれるのなら元々反対するつもりはありませんでした。娘の気持ちを受け取ってくれてありがとうございます」
「そんな。とんでもないです。私も陽菜さんのことが好きですから」
「まさか結婚を前提にとまで仰っていただけるなんて思っていなかったので、それで驚いてしまいました。すみません」

 誠意を見せなければと結婚のワードを口にしたが、それでかえって驚かせていたらしい。確かに二十歳にも満たない相手に結婚は驚かせてもしかたなかったと思う。

「こちらこそすみません。突然結婚だなんて言ってしまって」
「いえ、そこまで娘のことを考えていただけて嬉しいですよ。まだまだ子供で至らないところばかりの娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
「はい! よろしくお願いいたします」

 そのあとは優作以外の全員が泣いていて、ああ、この家族はとても心優しい人たちばかりなんだなと優作はしみじみ感じていた。


 陽菜の両親に認めてもらったあとは、ついでにと優作の両親にも交際の報告をした。優作の母は最初から陽菜の想いに気づいていたらしく、どうにか二人をくっつけようとずっと画策していたらしい。だから、交際の報告をしたら、母は「遅い! でもよくやった!」と優作の背中をバンバン叩いて祝福してくれたのだ。
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