知人の紹介で
「うん。まあ、調べてたら、たいていは恋人のスキンシップに関する記事に行き当たったから、性行為を除けば、今はそのスキンシップをしてみるのがいいと思った」
「ふふふ。私もまったく同じ。もっと安藤くんに触れたいのに足りないと思ってたから、手を繋ぐ以外のスキンシップもすればいいんだって気づいた」
「そっか。じゃあ、そういうデートをしてみる?」
「そういうデート?」
「一般的にはお家デートと呼ばれてるみたいだけど、どちらかの家でゆっくり話をしたり、映画を観たり、触れ合ったりするデート」

 志信のその提案に衣月は身を乗り出して同意の言葉を返した。

「してみたい。そのデートしてみたい」
「じゃあ、月に一回くらいでお家デートしてみようか」
「うん。してみる」
「それから二人の距離を近づけるのに、呼び方を下の名前に変えてみるのもいいかなと思ったんだけどどうかな?」

 その発想にはたどり着いていなかった。確かに親密な恋人は下の名前で呼び合っている気がする。物は試しと衣月は初めて志信の下の名前を呼んでみた。

「……志信くん?」
「うん……下の名前で呼ばれるのすごく嬉しい。ドキドキする。衣月さん。どう?」

 志信の言う通りだ。志信に下の名前で呼ばれると言いようのない喜びに包まれる。たったこれだけのことで感情がこんなにも動くとは知らなかった。

「……うん、嬉しいね。じゃあ、これからは下の名前で呼び合おうか。志信くん」
「そうだね……衣月さん」

 それから二人は毎月第一土曜日はお家デートを執り行おうと決めた。
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