知人の紹介で
 次の第一土曜日には、早速志信の家で初めてのお家デートを実行した。

「とりあえずくっついて座ってみようか。それで何か映画でも観よう」

 テレビの前に二人で並んで座る。少しずつ互いに身を寄せ合い、トンと肩が触れ合えば、衣月の心臓はトクトクと気持ちよくて苦しいリズムを刻みはじめた。

「すごい。肩が触れてるだけなのにドキドキするね。衣月さんを感じられて嬉しい」
「うん。私も。志信くんの体温が伝わってきて、それにドキドキするけど気持ちいい」
「衣月さん、少し僕に寄りかかってみてくれる?」
「こう?」

 少しだけ志信に体重を預けるようにしてみれば、志信の腕が衣月の肩に回り、さらに志信のほうへ優しく引き寄せられた。

「……なんだか癖になりそう。好きな人をこうやって抱き込むのはとても幸せな気持ちになるものなんだね」
「うん。温かくて、気持ちよくて、幸せ。少し恥ずかしいけど」

 志信に優しく肩を抱かれたまま、二人身を寄せ合って、映画鑑賞をした。選んだ映画は有名な数学者の人生を描いたドラマだったが、志信の存在ばかりが意識されて、どんな人生模様が繰り広げられていたのかまったく頭に残らなかった。
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