知人の紹介で

「もうっ、むかつく！」

　カフェを出たあと、愛子の家にやってきた千景は、とうとう胸の内に溜まったそれを吐き出してしまった。

「動揺してない感じで、蔑んだように言ってたのがよりむかつく！　でも、自分が悪いから何も言えない……もう自分にも腹が立つし」
「千景ちゃん……」
「でもさ、あんな言い方しなくてもいいと思わない？　『ご友人は選ばれたほうがよろしいかと』って。本当に嫌味な野郎！　勘違いだったんだから、ああまで言わなくていいじゃない。もう本当に腹立つ」

　千景はソファーに置かれたクッションをぎゅうぎゅう抱きしめながら、腹立たしさと申し訳なさで行き場のなくなってしまった感情をどうにかやり過ごそうとしていた。

「ごめんね、千景ちゃん。私がすぐに言わなかったから……」

　少しも悪くない愛子が謝りだすものだから、千景は大慌てでそれを止めた。

「ごめんごめん！　愛子のせいじゃないよ。私の早とちりが悪い。自分でも、この周りを顧みずに突っ走る癖、よくないってわかってるんだけど、どうにも感情が暴走してしまって。愛子も恥ずかしかったよね？　ごめんね？」

　千景は昔からそうなのだ。ついついそのときの感情で突っ走ってしまう癖がある。もう二十六歳のアラサーだというのに、一向に成長しない自分がなんとも情けない。

　愛子にも嫌な思いをさせただろうと申し訳ない気持ちが膨らんで謝れば、愛子は静かに首を横に振って笑っている。

「ううん。私のために怒ってくれたのは嬉しかったよ？」

　これは天使だろうか。愛子のかわいさに千景はもうノックアウト寸前だ。

「もう、愛子ー。愛子みたいないい子には絶対いい人が現れるからね。浮気くそ野郎なんて忘れて幸せになるんだよ」
「うん……ありがとう、千景ちゃん」

　愛子は笑みを浮かべているものの、その表情にはまだ悲しさも含まれている。やはりそう簡単に切り替えられるものではないのだろう。

　千景は愛子のすぐそばへ寄りそうと、そっとその頭を撫でて彼女を労わった。