この光が消えても~雪とイルミネーション物語
 私が歩き出した時、全力でこっちに向かって走ってくる人がみえた。彼だった。

「そこで待ってて!」

 彼がとても大きい声で、普段見せない必死な表情で叫んだ。


 息切れしながら彼はカバンの中身を見せてきた。

「どれがいい?」
「突然何?」
「光、必要だろ」
「えっ?」

 バイトが長引き、イルミネーションが点灯している時間に間に合わないと考え、思いついたのがイルミネーションが消灯してしまったこの場所をライトで照らす作戦だったらしい。彼がバイトしているお店のすぐ近くにある100円ショップで色んなライトを購入してきていた。

ツリー用の白いイルミネーションライト、それのカラフルバージョン、星の形したやつ、懐中電灯……自撮り用のライトまでも。その数10個!

「あっ、これがいい」

 雪だるまの中にライトが入っていて、スイッチを押すとピカっとうっすら光る物を選び、手に取った。

「やっぱりこれか。これ、最初にカゴに入れたんだ。でも光の量が足りないかなって思って後から明るく光るやつ、どんどんカゴに入れていったらこんなに沢山になった」

「そんなに買わなくても……。むしろ連絡して欲しかったです」

「……ごめん」

「今日の事もだけど、考えてること、きちんと言葉にして私に伝えてください! もう全部伝えて欲しい」

 私は、普段彼には見せないムスッとした顔をして、前から言いたかった事を言った。
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