漫画(ネタ)のためなら結婚します!
5話 結婚生活はネタだらけ?
◯真田邸、中生の部屋のベッド(朝)
明るい陽が差し込んでいる。
ふすまから朝の光が差し込んでいて、すずめはベッドの上で目が覚める。
すずめ「まぶし……、ダメだ、昨日はネーム描いてて遅くなっちゃったから……」
ベッドの中でゴゾゴゾと動くすずめ。
寝ぼけ眼のままゴロリと転がると、隣に中生が寝ている。
ギョッとするすずめ。
すずめ「ぎえーーーーーーー!」
真田邸にすずめの悲鳴が響き渡る。
すぐにバタバタという足音が響き、襖が思い切りスパンと開く。
組員A「なんだ!?」
組員B「敵襲か!?」
組員C「討ち入りか!?」
部屋には、ベッドの上で小さくなっているすずめと、その隣に不機嫌そうな顔をした中生がいる。
中生「なんでもない」
組員A「で、でも……」
中生「なんでもない」
中生はもともと目つきが悪いが、寝起きは輪をかけて人相が悪く見える。
その目で睨まれ、集まった組員も顔を青くする。
組員A「はい……」
組員A、B、C(顔こわ……)
駆けつけた組員が下がった後、すずめは肩をすくめて中生に謝る。
すずめ「す、すみません、つい……ちょっと、驚いて」
すずめ(そうだ、私、昨日から中生さんの家で寝起きすることになったんだった……)
すずめは申し訳なさそうに体を小さくしているが、中生はそっぽを向いて体を震わせている。
すずめ「あれ、どうしました?」
中生「……す、すずめ、お前、……朝からすっげえ声出したな」
中生はすずめの野太い声を聞いて、肩を震わせて笑っていた。
恥ずかしさで、すずめは真っ赤になる。
すずめ「ちょっと待ってください! 漫画とかドラマじゃ、キャーって悲鳴あげる女の子多いですけど、あれって腹筋とか発声を鍛えていないと物理的に出ない高音なんですよ! ほぼ引きこもりの私に出せるのはせいぜいヒャッ……とかの掠れ声ですし、本当に驚いたらヴブアァッ! みたいな野太い声が出るんですからね女だって!(早口)」
中生「わかったわかった」
すずめ「漫画で私も女の子たちに散々キャーって叫ばせてますけど! だから私も悪いんですけど!(早口)」
中生「……朝からよく口が回るな」
中生は上機嫌に笑い、布団から出ていく。
中生「俺は出かける。すずめ、お前はまだ寝てていいからな」
すずめ「……はい」
部屋から中生が出て行った後、すずめはもう一度ベッドにごろりと横になる。
すずめ(起きると、隣に旦那さんが寝ている、か……)
(こんな感覚なんだなぁ……)
◯少女漫画編集部
大崎は自分のデスクで、すずめと電話をしている。
手にはすずめから届いたばかりのネームがある。
大崎「ネーム見ましたよ。なんだか最近ますます良いかんじですよ!」
すずめ「へへ、今回ちょっと自信があるんです」
大崎「例の謎のレンタル彼氏とのデートから、すずめ先生、一皮むけたんじゃないですか?」
◯真田邸の中に作られたすずめの仕事部屋
すずめはイルカのぬいぐるみを抱きしめながら、大崎と電話をしている。
すずめ「謎のレンタル彼氏……ですか」
大崎「そーですよ! もしかしたら少女漫画の神様だったりして……!」
すずめ「ははは……」
すずめ(実は極道の若頭で、その人と今一緒に住んでます、なんて言えないよな……)
(だって、あまりにも漫画すぎる)
大崎「……すずめ先生、もしかして最近、気になる人ができたんじゃないですか?」
すずめ「え?」
大崎「だって絵にも最近色気が出てきた気がするんですよね、とっても良い傾向だと思いますよ」
大崎と電話を切った後、すずめは描いている漫画のページを見下ろし、首をかしげる。
すずめ(絵に色気……?)
◯真田邸、中生の部屋のある離れ(リビング)
中生の部屋で、すずめはスケッチブックを手に、ガリガリと真剣な表情でスケッチをしている。
向かい側では黒スーツを着たトキが、真剣な表情で何かにチャレンジしている。(顔だけで姿は見えない)
すずめ「トキさん、次はこれ、いいですか?」
トキ「わかりました、すずめさんがそう言うなら、やってみせましょう……!」
すずめ「いいですね、いいですよトキさん、すごく……!」
トキ「ありがとうございます!」
二人の真剣なやり取りを、部屋の入り口で呆れてみている中生。
中生「お前ら……何やってんだ……?」
中生の声に気がつき、トキがパッと顔をあげる。
トキ「中生さん、おかえりなさい!」
中生「いや、お前ら何してるんだ?」
すずめ「なにって、スケッチです!」
トキは黒のスーツを着用して、すずめの指示するポーズをとっていた。
すずめはそれを真剣な顔でスケッチしていた。
すずめ「こんなふうにスーツの男性を好きにできるなんて、なかなかないんですよ」
中生「言い方……」
中生は呆れたようにため息をつく。
着ていた上着をソファに放り投げ、そのままソファにどさりと座る。
どうやら疲れている様で、目頭を抑えている。
すずめ「大丈夫ですか? 疲れてますよね? もう休んだほうが……」
中生「わかってる、寝る」
寝ると言ってもソファから立ち上がらない中生を見て、すずめは不思議そうに首をかしげる。
すずめ(どうしたんだろ?)
中生は呆れた顔をしてすずめを見て、それから笑う。
中生「まったく漫画家ってみんなこうなのか? こんな場所で心細いかもしれないと思って、わざわざ顔を見に来たんだろ。それなのにお前は、呑気な顔でおかしなことして……」
すずめ「え! そうだったんですか……!」
中生「気楽なもんだな」
すずめ「ありがとうございます、私は大丈夫です。トキさんが一緒にいてくれるので……!」
中生はちらりと後ろに立っているトキを見る。
中生「そうか……。とにかく全ての事情を知ってるのは、このトキだけだ。トキも、何かあったらすずめに力を貸してやってくれ」
トキ「もちろんです! 大野内時男、中生さんのために力を尽くします!」
中生「頼む……。じゃあ俺は寝る。しばらく起こすな」
部屋を出ていこうとする中生に、すずめは慌てて駆け寄る。
すずめ「あ、中生さん! 待ってください!」
中生「なんだ?」
すずめはスケッチブックをぎゅっと抱きしめ、中生を笑顔で見上げる。
すずめ「実は私、今日編集の大崎さんに、絵に色気が出てきたって言われたんです! きっとこれって中生さんのおかげだと思うんですよね!」
中生「……」
トキ「……」
嬉しそうに大崎に言われた言葉を報告すると、中生とトキは同じように黙ってしまった。
すずめ「だからお礼が言いたくて!……あれ? 私、何か変なこと言いました?」
トキ「……あれ? 中生さん? もしかして手ぇ出して……?」
中生「ねえよ」
トキ「ですよね」
中生が部屋から出て行った後、すずめはトキに尋ねる。
すずめ「中生さんって、いつも忙しそうですよね。お家にもあまりいませんし。お仕事が忙しいんでしょうか?」
トキ「中生さんはレンタル彼氏派遣会社の他にも、キャバクラも何店舗も経営してますし、飲食店も経営してるすごい社長なんですよ。たぶんうちの組で一番の稼ぎ頭ですよ」
すずめ「へえ……すごいですね……」
◯香港のカジノ
煌びやかなカジノの一角、真田宗一が卓についている。
目の前の卓ではバカラが行われている。
そこに一人の美しい女性がやってくる。
女性は若くはないが、年齢不詳。
謎の女「晩上好、 宗一」
宗一「……これはこれは、高 瑞欣」
ルイシン「今夜は勝っているのかしら?」
宗一「ダメだ、すっからかんだよ。俺はバカラはてんで弱くてね」
宗一はゲームを終えると立ち上がり、高 瑞欣をエスコートするように先導する。
宗一「せっかく汽水樂のボスが訪ねてきてくれたんだ。ゲームなんてしてる場合じゃねえな。一杯奢ろう」
ルイシン「私も暇じゃないの。でも一杯だけ、付き合うわ」
宗一「ありがたいね」
ルイシン「ところで、私の娘と、あなたのところの中生、話は進んでいるのかしら?」
宗一「慌てるなって。まずは酒を一杯入れてからだろ?」
宗一とルイシンは、カジノの中にあるバーへと向かって歩いていく。
(5話おわり)
明るい陽が差し込んでいる。
ふすまから朝の光が差し込んでいて、すずめはベッドの上で目が覚める。
すずめ「まぶし……、ダメだ、昨日はネーム描いてて遅くなっちゃったから……」
ベッドの中でゴゾゴゾと動くすずめ。
寝ぼけ眼のままゴロリと転がると、隣に中生が寝ている。
ギョッとするすずめ。
すずめ「ぎえーーーーーーー!」
真田邸にすずめの悲鳴が響き渡る。
すぐにバタバタという足音が響き、襖が思い切りスパンと開く。
組員A「なんだ!?」
組員B「敵襲か!?」
組員C「討ち入りか!?」
部屋には、ベッドの上で小さくなっているすずめと、その隣に不機嫌そうな顔をした中生がいる。
中生「なんでもない」
組員A「で、でも……」
中生「なんでもない」
中生はもともと目つきが悪いが、寝起きは輪をかけて人相が悪く見える。
その目で睨まれ、集まった組員も顔を青くする。
組員A「はい……」
組員A、B、C(顔こわ……)
駆けつけた組員が下がった後、すずめは肩をすくめて中生に謝る。
すずめ「す、すみません、つい……ちょっと、驚いて」
すずめ(そうだ、私、昨日から中生さんの家で寝起きすることになったんだった……)
すずめは申し訳なさそうに体を小さくしているが、中生はそっぽを向いて体を震わせている。
すずめ「あれ、どうしました?」
中生「……す、すずめ、お前、……朝からすっげえ声出したな」
中生はすずめの野太い声を聞いて、肩を震わせて笑っていた。
恥ずかしさで、すずめは真っ赤になる。
すずめ「ちょっと待ってください! 漫画とかドラマじゃ、キャーって悲鳴あげる女の子多いですけど、あれって腹筋とか発声を鍛えていないと物理的に出ない高音なんですよ! ほぼ引きこもりの私に出せるのはせいぜいヒャッ……とかの掠れ声ですし、本当に驚いたらヴブアァッ! みたいな野太い声が出るんですからね女だって!(早口)」
中生「わかったわかった」
すずめ「漫画で私も女の子たちに散々キャーって叫ばせてますけど! だから私も悪いんですけど!(早口)」
中生「……朝からよく口が回るな」
中生は上機嫌に笑い、布団から出ていく。
中生「俺は出かける。すずめ、お前はまだ寝てていいからな」
すずめ「……はい」
部屋から中生が出て行った後、すずめはもう一度ベッドにごろりと横になる。
すずめ(起きると、隣に旦那さんが寝ている、か……)
(こんな感覚なんだなぁ……)
◯少女漫画編集部
大崎は自分のデスクで、すずめと電話をしている。
手にはすずめから届いたばかりのネームがある。
大崎「ネーム見ましたよ。なんだか最近ますます良いかんじですよ!」
すずめ「へへ、今回ちょっと自信があるんです」
大崎「例の謎のレンタル彼氏とのデートから、すずめ先生、一皮むけたんじゃないですか?」
◯真田邸の中に作られたすずめの仕事部屋
すずめはイルカのぬいぐるみを抱きしめながら、大崎と電話をしている。
すずめ「謎のレンタル彼氏……ですか」
大崎「そーですよ! もしかしたら少女漫画の神様だったりして……!」
すずめ「ははは……」
すずめ(実は極道の若頭で、その人と今一緒に住んでます、なんて言えないよな……)
(だって、あまりにも漫画すぎる)
大崎「……すずめ先生、もしかして最近、気になる人ができたんじゃないですか?」
すずめ「え?」
大崎「だって絵にも最近色気が出てきた気がするんですよね、とっても良い傾向だと思いますよ」
大崎と電話を切った後、すずめは描いている漫画のページを見下ろし、首をかしげる。
すずめ(絵に色気……?)
◯真田邸、中生の部屋のある離れ(リビング)
中生の部屋で、すずめはスケッチブックを手に、ガリガリと真剣な表情でスケッチをしている。
向かい側では黒スーツを着たトキが、真剣な表情で何かにチャレンジしている。(顔だけで姿は見えない)
すずめ「トキさん、次はこれ、いいですか?」
トキ「わかりました、すずめさんがそう言うなら、やってみせましょう……!」
すずめ「いいですね、いいですよトキさん、すごく……!」
トキ「ありがとうございます!」
二人の真剣なやり取りを、部屋の入り口で呆れてみている中生。
中生「お前ら……何やってんだ……?」
中生の声に気がつき、トキがパッと顔をあげる。
トキ「中生さん、おかえりなさい!」
中生「いや、お前ら何してるんだ?」
すずめ「なにって、スケッチです!」
トキは黒のスーツを着用して、すずめの指示するポーズをとっていた。
すずめはそれを真剣な顔でスケッチしていた。
すずめ「こんなふうにスーツの男性を好きにできるなんて、なかなかないんですよ」
中生「言い方……」
中生は呆れたようにため息をつく。
着ていた上着をソファに放り投げ、そのままソファにどさりと座る。
どうやら疲れている様で、目頭を抑えている。
すずめ「大丈夫ですか? 疲れてますよね? もう休んだほうが……」
中生「わかってる、寝る」
寝ると言ってもソファから立ち上がらない中生を見て、すずめは不思議そうに首をかしげる。
すずめ(どうしたんだろ?)
中生は呆れた顔をしてすずめを見て、それから笑う。
中生「まったく漫画家ってみんなこうなのか? こんな場所で心細いかもしれないと思って、わざわざ顔を見に来たんだろ。それなのにお前は、呑気な顔でおかしなことして……」
すずめ「え! そうだったんですか……!」
中生「気楽なもんだな」
すずめ「ありがとうございます、私は大丈夫です。トキさんが一緒にいてくれるので……!」
中生はちらりと後ろに立っているトキを見る。
中生「そうか……。とにかく全ての事情を知ってるのは、このトキだけだ。トキも、何かあったらすずめに力を貸してやってくれ」
トキ「もちろんです! 大野内時男、中生さんのために力を尽くします!」
中生「頼む……。じゃあ俺は寝る。しばらく起こすな」
部屋を出ていこうとする中生に、すずめは慌てて駆け寄る。
すずめ「あ、中生さん! 待ってください!」
中生「なんだ?」
すずめはスケッチブックをぎゅっと抱きしめ、中生を笑顔で見上げる。
すずめ「実は私、今日編集の大崎さんに、絵に色気が出てきたって言われたんです! きっとこれって中生さんのおかげだと思うんですよね!」
中生「……」
トキ「……」
嬉しそうに大崎に言われた言葉を報告すると、中生とトキは同じように黙ってしまった。
すずめ「だからお礼が言いたくて!……あれ? 私、何か変なこと言いました?」
トキ「……あれ? 中生さん? もしかして手ぇ出して……?」
中生「ねえよ」
トキ「ですよね」
中生が部屋から出て行った後、すずめはトキに尋ねる。
すずめ「中生さんって、いつも忙しそうですよね。お家にもあまりいませんし。お仕事が忙しいんでしょうか?」
トキ「中生さんはレンタル彼氏派遣会社の他にも、キャバクラも何店舗も経営してますし、飲食店も経営してるすごい社長なんですよ。たぶんうちの組で一番の稼ぎ頭ですよ」
すずめ「へえ……すごいですね……」
◯香港のカジノ
煌びやかなカジノの一角、真田宗一が卓についている。
目の前の卓ではバカラが行われている。
そこに一人の美しい女性がやってくる。
女性は若くはないが、年齢不詳。
謎の女「晩上好、 宗一」
宗一「……これはこれは、高 瑞欣」
ルイシン「今夜は勝っているのかしら?」
宗一「ダメだ、すっからかんだよ。俺はバカラはてんで弱くてね」
宗一はゲームを終えると立ち上がり、高 瑞欣をエスコートするように先導する。
宗一「せっかく汽水樂のボスが訪ねてきてくれたんだ。ゲームなんてしてる場合じゃねえな。一杯奢ろう」
ルイシン「私も暇じゃないの。でも一杯だけ、付き合うわ」
宗一「ありがたいね」
ルイシン「ところで、私の娘と、あなたのところの中生、話は進んでいるのかしら?」
宗一「慌てるなって。まずは酒を一杯入れてからだろ?」
宗一とルイシンは、カジノの中にあるバーへと向かって歩いていく。
(5話おわり)