思春期の青へ
村野さんは慌ててあんぐりと開いた私の口を塞いだ。


「こ、声大きい!宮下くんに聞こえちゃう!」
「あっ」


すっかり頭から抜け落ちていたが今は班ごとにまとまって座席が振り分けられている。

つまり前には圭と宮下くんが座っているわけで。


「何?呼んだ?俺がどうかしたか?」


(!)


やはり私の声が聞こえていたらしく宮下くんが振り向いてしまった。

村野さんの顔がまた一段と赤くなる。


「な、何でもないから!ちゃんと前向いて!」 「ん?そっか」


まだ他にも聞きたそうだけど、村野さんが必死に前を向かせようとするから宮下くんは前を向いた。


「ごめんね、村野さん」


危うく私のせいで好きな人に気持ちがバレかけたのだ。

申し訳なくなって目を見れない。

すると村野さんは私の肩に手をそっと置いた。


「大丈夫。驚くのも無理ないし。あと、村野さんじゃなくて杏菜でいいよ」


それなのに村野さん────いや、杏菜ちゃんは寛大な心で許してくれた。
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