授かり盲愛婚。 〜ハイスペ紳士とラグジュアリ一な一夜を過ごしたら、愛の結晶を宿しました。〜
第4章
第12話
婚姻届
私は部屋に戻り着替えを済ませても、落ち着かず部屋から出られないままだった。
すると、部屋のドアがノックされる音が聞こえた。
返事をすれば、彩愛さんが飲み物とビスコッティを乗せたトレーを持って入って来た。
「……大丈夫? 史菜ちゃん。お邪魔していい?」
「は、はい。どうぞ」
彩愛さんは小さな机にトレーを置きながら、私と向かい合うように座った。
「……びっくりしたわよね、ごめんなさい」
「いえ! 彩愛さんは悪くないです。それに、さっき桜花の会で聞いていたので……少しは覚悟が出来てましたし、彩愛さんは私のために秘密にしてくださったと思いますし、時間の問題だと思います」
侑埜さんが本気を出せば、きっと私なんてすぐ見つかってしまうと分かっていた。
あの人は全国にある宿泊施設を束ねている社長だから、侑埜さんのお母様に言われたように私のような没落した令嬢より未来あるご令嬢と結婚した方が絶対にいいと思って離れたのだ。
「……彩愛さん」
「ん?」
「ずっと誤魔化しててすみません……わたし、彩愛さんに聞いて欲しいことがあります」
「うん。私で良ければ聞くよ」
私は、ここでお世話になってからずっと誤魔化していた。
得体の知れない東京から来た妊婦を温かく迎え入れてくれて働かせてくれた。なのに、私はわがままで彼への蓋した想いが溢れそうだったから自分勝手に話さなかった。
侑埜さんが来たからじゃなくて、早く話をすれば良かったと今は後悔している。