授かり盲愛婚。 〜ハイスペ紳士とラグジュアリ一な一夜を過ごしたら、愛の結晶を宿しました。〜
「大丈夫、ですか?」
「は、はい、ありがとうございます。大丈夫です」
大丈夫ではなくてもきっとここにいるってことは、高貴な人で住人ってことだし早く離れたい。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
ここから立ち去ろうと思い、それだけ言って今度こそ守衛室へと足を進めると「もしかして、君、史菜ちゃん?」と小さな声が聞こえてきた。
その主は男性だし、私を名前で“ちゃん”付けなんてそういない。
そう思って私は、振り向くと男性と目が合う。
それはとても知っている目で、懐かしい人の面影があった。
「から、はし先輩……?」
「うん。そうだよ……よかった間違ってなかった」
ほっとした表情はあの頃と変わらないが、少しだけ大人の空気が漂っている。彼に驚きが隠せない。
だって、私の高校時代にお世話になった先輩で好意を寄せていた唐橋侑埜先輩だったから。
でも確か、海外に行ったんじゃ……?
まさか、今話題になってる海外戻りで若くして社長になったエリートって……。
「久しぶりだね、史菜ちゃん。今日からここでお世話になる唐橋です。よろしくね」
うん、噂の人だ。
「こちらこそ、よろしくお願いします……」
そうして。
学生の頃ぶりの再会をした。