授かり盲愛婚。 〜ハイスペ紳士とラグジュアリ一な一夜を過ごしたら、愛の結晶を宿しました。〜



「え! それは悪いです……椿谷さんにもご迷惑をかけてしまったのに」

「いいの、いいの。こういうときのために使わないでいつ使うのって感じだし、私も金城の産婦人科にお世話になったのよ」

「で、でも」


 断ろうと口を開いたが、すでに電話していて「門の近くのベンチだよ」と言い電話は終了したのか耳からスマホを外した。


「すぐ来るから、待ってね。今から受診出来るようにするって言っていたから多分すぐ出来るよ」

「そんな、ありがとうございます」

「ううん、全然だよ。話は変わるけど、今まで辛くあたっちゃってたでしょ? ごめんね。最初は世間知らずのお嬢さんが来て厳しくしちゃってたんだけど……実は」


 椿谷さんが何か話をしようとしたとき「星萊(せいら)ちゃん」と誰かが呼んで彼女はそちらを向く。

 そういえば、椿谷さんってフルネームが椿谷星萊さんだった気がする。


悠浬(ゆうり)くん、来てくれてありがとう」


 椿谷さんは仕事では見せないような表情を見せていて、幸せそうだなぁって思った。


「あぁ、電話で話してた子はそこにいる子?」

「そうなの。後輩の滝脇史菜さんよ……滝脇さん、この人が旦那の悠浬くんです」


 彼女と一緒にこちらに来た旦那様は「初めまして、椿谷悠浬です」と自己紹介をしてくださった。

 なので私も自己紹介をしようと立ちあがろうとする。


< 64 / 209 >

この作品をシェア

pagetop